allen eager

「SWINGIN’ WITH ALLEN EAGER」(MARSHMALLOE RECORDS MMLP−102)
ALLEN EAGER

上不三雄氏のレーベル、マシュマロレコードから出たアルバムで、A面はアレン・イーガーの入ったテリー・ギブス・オールスターズ、B面はイーガー〜ハワード・マギークインテットのバードランドからの放送録音を音源とした日本独自編集のアルバム……だと思う。これもめちゃくちゃ昔にレコードで買ったもの。380という番号が振ってある。大和明さんの本かなにかで(まったく覚えていない)アレン・イーガーとワーデル・グレイの比較の話があって、ワーデル・グレイの大ファンである私は、それは聴かないと……! と思ったのだろうと推測する。私の理解では、イーガーはビバップ初期の白人テナーで、15歳のときにウディ・ハーマンに入ったぐらいの早熟なミュージシャンだったが、その後、バップムーブメントに身を投じて、タッド・ダメロンやファッツ・ナヴァロといった黒人バップミュージシャンとの共演も積極的に行ったようである。そのあたりはたぶんかなりの覚悟のうえだったのだろうと思う。その結果がA面に表れていると思われるのだが、アレン・イーガーのアルバムというにはソロスペースが少ない。ライヴなのでもっと長く吹けばいいと思うのだが、もうひとりのテナー(フィル・ウーソ)もソロをしており、ほかに金管がふたりがソロをするし、リーダーのヴァイブももちろん大きくフィーチュアされるので、このなかからイーガーのソロをじっくり聴くのはなかなか至難の業である。1曲目は「パーディド」だが、デーハーなトランペットのあと出てくるテナーが(おそらく)イーガーだと思う。たしかにレスター・ヤング系の流麗でメロディアスなラインをしっかりした音で吹いていて、なるほどワーデル・グレイと比較されるのもわかる……と思ったが、残念ながらソロ短かすぎ(2コーラスのみ)。歌心あふれるフレージングだが、メカニカルな部分もあり、また、ブロワーとして盛り上げることもする……つまりはレスターの正統な後継者的なひとなのかと思う(まさか、このソロがフィル・ウーソじゃないでしょうね)。2曲目「タイニーズ・ブルース」というのは小洒落たウエストコースト風の曲で、最初に(たぶん)イーガーのソロがフィーチュアされる。けっこうオーバーブロウしている感じだが、そのあとにトロンボーン(じゃなくてメロフォンらしい)がソロをとって、そのあとまたテナーがソロをする。こっちのソロのほうがずっといいのだが、これがもうひとりのフィル・ウーソのソロなのかどうかわからない。まあ、もしかしたらイーガーが2回ソロをしているという可能性もなきにしもあらずだが……まあ、ないでしょうね。ウーソというひとは、イーガーと似たところもあるのだが、音色自体もかなりレスターっぽい感じのはずなのである。まあ、わしにはわからん! とにかくトランペットがうるさい(申し訳ないがこういうのはきつい。エリントンからベイシーなどなど渡り歩いたひとらしいけど……)。つぎの曲は「ナウズ・ザ・タイム」で、先発ソロがイーガーと思うが、ええ感じである。トランペットのソロを挟んで登場するテナーのクールな雰囲気のソロはたぶんウーソなのではないでしょうか。これも見事な歌い上げである。続く「ファッツ・ニュー」はなんと、テリー・ギブスのビブラホンソロだけをフィーチュアした演奏。私の理解では、このアルバムはアレン・イーガーというバップ初期の白人テナー奏者のすばらしさを世に知らしめるために、日本独自に選曲したものかと思っていたが、なんでイーガーの入っていない演奏がこうしてフィーチュアされているのかよくわからん。A面ラストはまたまた「パーティド」で、ロイ・エルドリッジを連想させるトランペットのソロのあと、全員のソロチェイスが行われ、MCが入って終わる……というよくわからない演奏で、イーガーはほとんど出てこない。B面は、アレン・イーガー〜ハワード・マギー双頭バンドの演奏。A面に比べてもそれぞれのソロがかなり長尺である。1曲目はおなじみ「バーニーズ・チューン」だが、正直、イーガーのソロはめちゃくちゃ普通で、つづくマギーのソロの上手さが光る。2曲目は「アイ・キャント・ゲット・スターテッド」でマギーがテーマを吹きながら崩していく。ここでのイーガーのソロを聴くと、音色的にもかなりレスター的な感じもあるし、A面について書いたことも「そうとは断言できんなあ」という感じです。皆さん! 私の音楽に関する文章は信用しないように! いや、ほんと。ラストはラテンリズムの「ハウ・ハイ・ザ・ムーン」で、イーガーは美味しいフレーズを連発しているのだが、途中で考え込んだり、つっかえたりしているあたりも、なかなかいい雰囲気である。流暢であるだけがよいわけではなく、こういう真摯な演奏は悪くないのである。それにしてもマギーは絶好調である。最後はオーニソロジーになる。表ジャケットと裏ジャケットにかなり大きく写っているマウスピースだが、これがなんだかわからない。まあ、どうでもいいことだが。イーガーはその後ミュージシャンを辞めてレーサーになったが、なぜか82年にカムバックアルバムをリリースし、それは私もジャズ喫茶で聴いた。なんというか、人生を遊んだひと……という気がします。