petter eldh

「KOMA SAXO LIVE」(WE JAZZ RECORDS WJCD28)
KOMA SAXO

ベースのPETTER ELDHが率いる「KOMA SAXO」のライヴ。話題になった1枚目を除くと、あとはヴァイナルや7インチだったらしく、聴いたことなかった(YOU TUBEでどこかのライヴを観たことある)。今回はじめてがっつり聴いたけど、めちゃくちゃおもろい! サックス3人(ヨナス・カルハマーが入ってる)とリーダーのベース、ドラムというクインテット。いきなりお祭りのようなツッカツッカツッカツッカ……というアホな感じのノリ(ジャズとはほど遠い)で曲がはじまり、そのノリのままベースはガシガシと弾きまくり、ドラムはドタンバタンと叩きまくるのだが、次第にサックス陣がヒートアップしていき、気が付いたらなんだかよくわからない世界に連れていかれている……という感じだ(曲は1〜3は切れ目なく演奏される)。アコースティックなフリージャズ、という私のいちばん好きなところを突いてくるので、楽しくてしかたがない。しっかりしたコンポジションとアレンジ、枠組みのなかで暴走し、ときに枠を突き破って走り回り、逃げ惑うサックスたち、躍動しまくり暴れまくるリズム……これはいわゆる「ジャズ」ではないか、と思った。あの「ジャズ」が進化の果てにこういう状態になっている時間軸があってもなんの不思議もない。ここにはスウィング、即興……などジャズの要素がそろっているからだ。5人ともやり手というか逸材というか猛者というか変態というか……強烈な個性と技術と音楽性の持ち主のようなので、あらゆる瞬間が輝いている。こういう感じの、ソロに狂気を感じるだけでなく、アンサンブルに狂気を感じさせる演奏はクールでアヴァンギャルドで最高であります。5曲目の「オーティスとクリスチャン」というタイトルの曲もなんだかわけのわからん1分ちょっとの短い曲。6曲目はアンサンブルが異常にかっこいい曲。よくこんな曲を考え付いたなと思う。疾走感のあるサックスソロ、千変万化するリズム、頭のおかしい感じのリフ、アコースティックなノイズの嵐……いやー、たまりませんね。7曲目はカルハマーのフルートをフィーチュアしたストレートアヘッドな曲。サックスそれぞれのラインはもちろん、ベースのライン、ドラムのラインなどどれを聴いても新しい発見があり、それらが一体になる喜びは感動である。ラスト8曲目は「STEPP,MIN STEPP」というタイトルになっているが、モロ「ポーリュシカ・ポーレ」で笑ってしまう。観客(?)が歌い出すところも面白くて、それがぐじゃぐじゃになっていくあたりは生活向上委員会やICPオーケストラみたいでもある。聴くたびに濃密な時間を過ごせるアルバム。短い演奏に濃いーものが詰まっている。今年のベストアルバムにしたいぐらいの傑作だと思います。