wolfgang engstfeld

「ENGSTFELD PULMER WEISS」(NABEL−RECORDS NBL8310)
ENGSTFELD−PULMER−WEISS

 このひとのことはよく知らない。ネイベル(?)というレーベルから出ている二枚のレコードを持っているだけだ。その二枚はメンバーがまったく一緒であって、そのうちの一枚が本作である。ピアノレスのテナートリオという編成がまずそそるが、いまでこそ珍しくないこの編成があの当時はそこそこの冒険であったように思う。このテナーのイングストフェルドというひとは、音色もアーティキュレイションもリズムもメロディもハーモニックセンスもどれをとってもすぐれているが、とくにハーモニーのセンスが抜群だと思う。単音楽器であるテナーサックスのアドリブでハーモニーを感じさせる、というのは、簡単なようでじつは並大抵ではないのだが、彼のようにパワフルかつメロディックなラインを吹きながら、モダンなハーモニーを展開することができる、というのは、テクニックも音楽性も必要ではあるが、やはりセンスが非凡だと思う。だからといって知的な演奏に終始しているわけではなく、大胆なパワーを見せつける。そのあたりのことは、B面一曲目の「オール・ザ・シングス・ユー・アー」を聴けばすぐにわかる。こういうタイプのテナーは大好きなのである。ざっくり言うと、コルトレーン系の白人テナーだが、リーブマン、グロスマン、ブレッカー……のような路線にはいかなかった、という感じか。このひとを聴いていつも思うのは、アラン・スキッドモアに似てるかなあ、という印象。もちろんスキッドモアのほうがパワフルでアバンギャルドだが、音づかいやアドリブの姿勢、チェンジに対するアプローチなど、同種のものを感じる。ピアノレスだが、大胆で自由で放埒な演奏というわけではなく、逆にピアノ不在を感じさせないぐらいきっちりした音楽になっている。そういうところもこのひとの繊細さなのだろうなあ。ベースとドラムもすごくよくて、とてもいいバランスのトライアングルになっている。なお、下記の「ドライヴィン」とも、グループ名が「イングストフェルド・パルマー・ウァイス」という連名になっているが、明らかにイングストフェルドのリーダー作のように思われるので、この項に入れておく。

「DRIVIN’」(NABEL−RECORDS NBL8518)
ENGSTFELD−PULMER−WEISS

上記とまったく同じメンバーによるピアノレスのテナートリオによる演奏だが、スタンダード中心の上記にくらべ、オリジナルが多い。ベースソロによる「ナルディス」やドラムとのデュオによる曲などもあり、よりアグレッシブな印象を受ける。それにしてもうまいよなあ。知的でパワフルで繊細で……聴いているとひとときのあいだハーモニーの展開のうえで遊ばせてくれるような……。フリージャズだけが「遊ばせてくれる」のではないことがわかる。こういう演奏は、ほんま好きです。ランディ・ブレッカーが入ったレコードもたしか試聴した覚えがあるのだが、それは買わなかったと思う(どこかにまぎれこんでる可能性もあるけど)。今にして思えば残念だが、やはりワンホーンがいちばん聴き応えがあるのでは?