yoshihito eto

「RAY」(EWE RECORDS EWCD−0103)
YOSHIHITO ETO

 エルヴィン・ジョーンズへのトリビュートアルバムと言うかトリビュートバンド。本田珠也がリーダーの「エルヴィン・ジョーンズ・トリビュート・バンド」という名前のグルグループがあるが、あれはなぜかフロントがアルトサックスである。エルヴィンの音楽性というのは、ドラムとテナーサックスの組み合わせによって決定づけられていると思うので、アルトがフロントのバンドからはどうしても「あの音」は聞こえてこない(もちろん「表面的に真似るつもりはない」ということかもしれないが)。本作は、フロントがテナーふたりという点でもエルヴィン的であるし、曲はほぼ全曲、エルヴィンの曲か、もしくはジャズマシーンでよく演奏されていたファンにはおなじみの曲である。しかし……ここがおもしろいところで、出てくる音はけっしてエルヴィングループの音ではないのだ。エルヴィンの曲ばかりなのに、編成もいっしょだし、メンバー全員がエルヴィングループへの深い深い愛と造詣を持っていると思われるのに、である。これはどう考えても、江藤良人グループの音であって、しかもひじょうにすばらしい。よく考えたらこれはあたりまえのことだ。エルヴィングループの音を聴きたかったらエルヴィンのレコードを聴けばいいわけであって、このグループはあくまで江藤良人なりのエルヴィントリビュートであり、模倣ではないということだと思う。テナーのふたりのうち、キューバ人のテナーはまったく知らない人だがなかなかええ感じ。もうひとりは竹内直なので文句なしのすばらしい演奏。パーカッションも加わっており、重厚かつ飛翔感のあるサウンドがぎっしり詰まっている。エルヴィンのファンもそうでないひともぜひ。