「FAR OUT」(CULTURE PUBLISHERS CPC8−5152)
ANTONIO FARAO
タイトルは自分の名前にかけてある。テナーのワンホーンカルテットだが、テナーがボブ・バーグでなかったらたぶん聴いてないと思う。いやー、すばらしいです。ボブ・バーグも凄いのだが、リーダーのファラオが全体の方向性をはっきり示している。とはいうものの、私の耳はついついボブ・バーグのテナーに向いてしまうのだが、これがもうめちゃくちゃすごいので「はああ……」という感じで聞き惚れてしまう。1曲目は「セブン・ステップス・トゥ・ヘヴン」なのだが、11曲中3曲を除いてすべてオリジナルで固めている意欲作である。ボブ・バーグが事故死する二カ月まえの演奏ということで、本作を聴くと、本当にその死が悼まれる。デンオンではかなりフュージョン的なサウンドになっていたバーグだが、ここでは4ビートジャズの権化となって吹きまくっている。どちらがいいということはないが、ここでのバーグのソロは本当に熱くてかっこいい! たとえば10曲目のロングソロなどすさまじさに開いた口がふさがらない。もちろん主役のファラオのバップ的要素を感じられないピアノも粒立ちがすばらしくてめちゃくちゃすごい。ドラムはポリリズムも駆使して躍動感みなぎるが、そこをバーグのテナーがひたすら駆け抜けていく。ソロの構成力をテクニックが裏付けている感じなので、向かうところ敵なしだと思う。ベースも鋭さと温かさを併せ持っていて、安定感抜群である。たぶん有名なひとなのだろうな。全11曲だが5曲目はピアノトリオ、ラストの曲は7曲目(ほんとにすばらしい。聞き惚れるしかない)をピアノソロでやったバージョン。これでアルバムを締めくくる。最高です。傑作。