「HAVE NO FEARS」(NESSA RECORDS NCD−6)
VON FREEMAN
ヴォン・フリーマンの2作目のリーダー作。フリーマンはシカゴのひとだからか、よくグリフィンと比較されるが、たしかに似ているのである。あまりミュージシャンを〇〇に似ているとか書くのはよろしくないと思うが、まず音色。同じくリンクのメタルだから、というのは理由にならない。やはり、「こういう音を出したい」というその目標の音色が同じだから、似たような感じになるのだ。そして、ノリ。言葉にするのはむずかしいが、8分音符の吹き方のリズムやフレージングのなかでのダイナミクス、フレーズの切れ目の音の上げ方、アーティキュレイション、倍テンでの吹き方、高音のしゃくり上げる感じ……などなどが共通しているように思う。もちろんなによりもフレージングそのものが似ているのだが、これはホーキンスやプレス以上にチャーリー・パーカーからの露骨な影響があるせいだと思う。このあたりのこともいろいろ考えだすときりがない。だが、グリフィンよりもずっと過激でフリーキーな(ローランド・カーク的?)部分もある。ライナーノートにあるインタビューによると、最初はコールマン・ホーキンスの「ボディ・アンド・ソウル」をコピーし、そのあとレスター・ヤングにもあこがれてベイシーバンドでの「ジャンピン・アット・ザ・ウッドサイド」「エヴリ・タブ」などのソロをコピーしたらしい。なんーだ、我々とおんなじじゃん。1曲目は非常に快調なのだが、なぜか2曲目はいまいち乗り切れない感じである。しかし、よく聴いてみると、いろいろ試しているのだ。これはこれで愛すべき演奏ではないか。つづくジョン・ヤングのピアノはとても快調だが、やはり心に残るのはそのまえのフリーマンのソロである。3曲目はバラードで、「ポルカ・ドッツ・アンド・ムーン・ビームス」だが、無伴奏ソロのイントロからテーマに入る感じといい、硬質な音色とサブトーンを織り交ぜた音使いといい、(これはまちがっているかもしれないが)ああ、シカゴジャズ……という硬派な伝統を感じた。ピアノのジョン・ヤングは正直、ハードバップとしては最高の演奏をしている。しかし、フリーマンは我々が望むものを壊してまで、そのうえの高みに上がろうとしている。最終的にいわゆるジャズのボキャブラリーに帰るのだが、その過程で「え?」というところまでを試しているのだ。4曲目はタイトル曲で、フリーマンのオリジナル。ちょっとぎこちない8分音符の吹き方までもリアルに感じてかっこいい。いや、ほんま、マジで。ジョン・ヤングの流麗なピアノとの対比もいい。ラストのドラムとテナーのデュオは、それまでの流れをぶった切るようなコルトレーン〜エルヴィン的な演奏。ラストの5曲目はCDのボーナストラックで、超アップテンポのマイナー曲。楽しかったです。