「LET’S SWING NOW VOL.1」(VICTOR SJV−818〜9)
TAKUYA FUJIOKA PRESENTS
俳優でジャズファンの故・藤岡琢也がプロデュースした日本ジャズのシリーズで、たぶん5枚出ているんだとおもう。ピアノの八城一夫が音楽監修的な立場にあるのだろう。一時は全部持っていたが、今は第5集のドナルド・ベイリーのハーモニカをフィーチュアしたアルバムは売ってしまって、4枚だけ持っている。この第一集は二枚組で、スタジオライヴ。シリーズのショウケース的な内容で、複数のグループが2、3曲ずつ披露して、あとは大ジャムセッション……という、良くも悪くも大味な内容。3管にギター入りというにぎやかで大所帯な北村英治グループや世良譲トリオ+マーサ三宅、八城一夫クインテットなど、個人的にはほとんど興味のない世界なのだが、結局、このアルバムを今でも持っているというのは、中村誠一が入っているからなのだ。2枚目のA面をしめる2曲の演奏は、実質、中村誠一クインテットといってもいいようなハードバップで、一曲は中村のおなじみのオリジナル「アドベンチャー・イン・マイ・ドリーム」で、もう一曲は当時中村がはまっていたタレンタインの「スピード・ボール」(リー・モーガンの……というべきかもしれないが)。ここでの中村誠一のテナーはすばらしいし、ジャムセッションでも傾聴に値するソロをしているが、やはりほかのメンバーとはしっくりいっているとはいえず、ダレる部分もある。もちろん、尾田悟のテナーはうまいなあ、とか、じっくり聴くとおもしろい箇所は多々あるのだが、やはり結局は好みの問題ということになります。冒頭とラストに藤岡琢也の長いMCが入っているのも、なかなかおもしろい趣向である。
「LET’S SWING NOW VOL.2」(VICTOR SJV−869)
TAKUYA FUJIOKA PRESENTS
このアルバムは、バラードをのぞき、ほぼ全曲コピーした。松本英彦と中村誠一のテナーバトルなのだが、バトルというより、アル・コーン〜ズート・シムス的な「寄り添うような」テナーチームである。どうしてコピーしたかというと、どの曲もテンポがあまり速くなく、ブルースとか簡単な進行のものが多く、まあ、正直な話、「手頃」だった、ということでしょうか。とくに中村誠一のフレーズはきっちり譜割りできるものが多く、歌いやすく、すごく勉強になった。逆に松本英彦のほうが即興的で自由度も高く、コピーしにくかったぐらいだ。その松本さんだが、フィーチャリングナンバーのアナザーユーでおんなじフレーズを何度も何度も吹いていて、さすがにこれはちょっと……と思わぬでもなかったが、録音日にたまたまそのフレーズに「はまる」ということはあるので、そういう状態だったのだろう。中村誠一のフィーチャリングナンバー「マイ・シップ」は絶品。このひとはいつも思うことだがバラードがうまい。というわけで、ほんとによく聴いたアルバム。一生手放すことはあるまい。
「LET’S SWING NOW VOL.3」(VICTOR SJV−874)
TAKUYA FUJIOKA PRESENTS
八城一夫トリオに渡辺貞夫がワンホーンで加わったカルテットによるバップセッション。おお、「バード・オブ・パラダイス」や「アイム・オールド・ファッション」のような凄まじい、火の出るようなバップフレーズの応酬が聴けるのではないか、と期待したが、たぶんこの日、ナベサダはかなり不調だったのだろうと思う。指とタンギングがバラバラだし、フレーズも出てこない。だが、そこはさすがにナベサダであって、ある一定のレベルはちゃんとキープしている。
「LET’S SWING NOW VOL.4」(VICTOR SJV−880)
TAKUYA FUJIOKA PRESENTS
中村誠一を中心としたセッション。リハーサルを積んだというだけあって、セッションといってもバンドサウンドがちゃんとしている。渡辺賀津美の参加が目玉だろうが、藤井貞泰のピアノ〜エレピ、田村ユリのオルガン〜シンセ……というのもおもしろい趣向だが、全体として中村誠一にとって、リーダーアルバムのようでリーダーアルバムではない、といった中途半端さがあったのではないか、と想像される。つまり、全面的に自分のやりたいことができるわけではないが、そのなかでリーダーシップを発揮しなければならない、という状況。それなりに面白いことをいろいろ考えて、実行しているが、根本的には藤岡琢也〜八城一夫の音楽なのである。結果的に、聴き所は多々あるが、どうももどかしいような作品になった。中村誠一のリーダー作はどれも傾聴に値するものばかりなので、余計にそう思う。これなら、リハを積んだりせずに、ぶっつけのカッティングセッションみたいにしたほうが緊張感が出て、おもしろかった……のかもしれない。ただ、中村誠一のソロはどれもすばらしい。