「月に向かって歩け!」(AKETA’S DISK MHACD2645)
藤澤由二
ものすごーーーーく久しぶりにちゃんとした、いや、ちゃんとしたというのはあかんか、えーととにかくオーソドックスな「ジャズ」を聴いた。主人公の藤澤由二さんは榎本秀一グループなどで活動するピアニストで(だから、私も聞いたことあるはず)、これが初リーダー作。アケタズディスクから出すだけあって、いかにも中央線ジャズ的な匂いがする超上質のピアノトリオ。なにしろベースが望月英明(太い!)。ドラムが上村計一郎(めっちゃええ)。どちらも最高の演奏で、主役をがんがん盛り立てる。それにしてもええピアノやなあ。全作オリジナルだが、どこかで聴いたことあるよなあ、スタンダードじゃなかったっけ、と思ってしまうほどのええ曲揃いなのだ。「ドッドド、ドドッド」という曲などは、そういうリズムの曲だったりして、ユーモアもある。ピアノプレイ自体は、メロディもリズムもハーモニーもインタープレイもそれぞれ等分に大切にしている感じで、しかも味わい深い。噛めば噛むほど味の出てくるスルメのような演奏。ピアノは歌いまくるし、トリッキーな部分もあるし、言うことなし。このトリオは、ほんまええバランスやなあ……と思って聴いていると、三曲で榎本さんのテナー登場。これが、あまりに自然に参加しているもんだから、特別ゲストといった感じがまるでない。最初の曲からずっと入ってたみたいな錯覚に陥る(また、榎本さんの参加曲が3曲ともめちゃくちゃかっこええ曲なんだよなー。テナーソロも最高。とくに「エクスティンクション」という曲はすばらしいテーマ)。このアルバムは傑作だと思う。ライヴ盤もぜひ出してほしい。