atsuo furukawa

「LA FEMNE SANS TETES」(CASTLE RECORDS CYU−37002)
古川敦雄 清水晃

 まったく予備知識なく聴いたのだが、最初のアルトの無伴奏ソロで入るところからもう楽しそうなわくわく感に満ちていた。しっかりした音、音色、アーティキュレイションに基づいて力強く伸びやかに吹き鳴らされるアルトサックス、それをときに包み込み、突き破り、対峙するドラム。まさにフリージャズの王道だ。サックスもドラムも、ジャズを基礎としているようで(ときどき「もろ」という感じのバップフレーズみたいなものが出る)、デュオとしては非常に古いタイプのフリージャズだと思うが、いつの時代もつねに力を持っているのは「王道」の演奏だ。とくにサックスは、さまざまなテクニックを駆使してアイデアを発展させ、一本調子にならないような吹き方を心がけているので、このシンプルなセッティングでも飽きることがなく聴き続けられるのだ。なんというか、フリージャズサックスの歴史を見ているような吹きっぷりなのだが、それがパロディとか模倣とかに聞こえず、ちゃんと自分のものにしているので、すがすがしい。このふたりは、めちゃくちゃ「心得てる」感があるが、そういう演奏は往々にして、よくできてはいるが結局は「フリージャズ」「フリー・インプロヴィゼイション」のクリシェになっている場合もあり、こうやってこうやってこうきたらこう返してこんなところでギャーッとやって盛り上がってバン! と終わったらフリージャズなんでしょ、という「即興としてのパターン」化されたものも正直くさるほど聴いてきたが、そういうのとは真逆の、真摯で、なにかを必死に作り出そうとしている演奏で、殻を破ろうという強い意志も感じられる。とまあ、えらそうなことをぐちゃぐちゃと書いたが、すっかり気に入りました。ほかに録音はないのかなあ。対等のデュオだと思うが、先に名前の出ている古川さんの項に入れた。