nobuyasu furuya

「BENDOWA」(CLEAN FEED CF159CD)
NOBUYASU FURUYA TRIO

 うーん、これは凄い。全然名前を知らないひとだったので、クリーン・フィードというレーベルを信用して思い切って購入してみたが大正解。おそらくフリー系のテナー〜バスクラ奏者でピアノレス、日本人なのにクリーン・フィード……これだけの条件を並べられると食いつくわなあ。でも、情報はそれだけしかなかったし、怖いなあ、と思いながら聴いてみると、なるほど! 力強い、ダーティートーンをまじえてのブロウは私の好みにどんぴしゃりで、ブラックミュージック的なフリージャズといわゆるフリーインプロヴィゼイションがテナーという楽器によって見事に融合した表現となっている……とか、ごたくを並べるまえに、とにかくかっこいいし、パワフルだし、ブロッツマンやヴァンダーマーク、ガスタフソンなどの好き勝手な奔放さよりも、もっとグッと拳に力をこめて白熱したものがこみ上げてくるまでじりじりと待ち、そのあと噴火するような、たとえばデヴィッド・ウェアなどのような黒人的な熱気と重さをも感じた。あとになって、元渋さ知らずでバリサクを吹いていた、とか、タロガトを習うためにヨーロッパに移住した、とか、高木元輝さんのマウピを受け継いでいる、とかいろいろ情報を得たが、なんの予備知識もなくパッとこのアルバムを聴いたら、日本人とは思わなかったと思う。しかし、そう言われてみると、静謐な部分などに和風の表現があるのかもしれないが、まあ、全体的な印象としては「すげーテナーが出現したなあ」というものだった。「出現」というのは失礼であって、私が知らなかっただけなのだろうが。ヘヴィローテーションで聴かせていただいてます。

「STUNDE NULL」(地底レコーズ B45F)
NOBUYASU FURUYA TRIO + QUINTET

 前作がめちゃめちゃよかった、ポルトガル在住のテナー奏者古谷氏の第二作。今回はピアノレストリオのパートと、ピアノとトロンボーンが加わったクインテットのパートに別れている。どちらにおいても、古谷氏のテナー、バスクラ、フルートが際だっている。信念を、それもちょっとやそっとのことでは振り回されないような相当堅固な信念を持って演奏しているように思う。ほかのメンバーもリーダーのそういった、まっすぐまえを見据えた意気込みみたいなものをわかちあっているようだ。私が聴いたかぎりでは、前作も本作も、フリー「ジャズ」という、ブラックミュージックの伝統のうえにしっかりと乗った、骨太な表現をしているように思える。濁った音色のぶっといテナーの音、軋み、歪むバスクラリネットの音、声と混じり合った肉感的なフルートの音などのアコースティックな迫力は、重戦車のように、後ろを振り返らず、立ち止まらず、ひたすら前進していくようなそのパワーが感動を呼ぶ。こういう感じのプレイヤーのなかでも、現在、ここまでいろいろ切り捨てて、シンプルな表現を試みているひとは少ないと思う。それは、かなり強固な意志が必要なことだからである。そして、そういう精神の持ち方がブロウに直結している点が説得力を生んでいるのだろう。