「UNDER NUBIAN SKIES」(HIGH NOTE HCD7023)
CARLOS GARNETT
ジャケットだけみるとすっごーくいかがわしい感じなのだが、中身はまともすぎるほどまとも。97年の作品で、9曲中7曲にラッセル・ガンが参加しており、ドラムは奥平真吾である。奥平はこの時期、長期に渡っての渡米中で、この翌年、自己のリーダー作でもカルロス・ガーネットを起用しており、たがいに信頼し合う関係だったのだろうと思う。カルロス・ガーネットといえば、マイルスの「オン・ザ・コーナー」や「イン・コンサート」あたりに加わっていたことでも知られているが、ほぼ同時期のエイゾー・ローレンス同様、一般的な評価はいまいちだったようにも思う。でも、もちろんそれはあくまで「マイルスバンド」のアルバムとしての評価であって、そういう世間的な評価がまちがっていることは、先日出たフィルモアの完全盤での若きグロスマンがどれだけ凄かったかを聴けば明らかである。ガーネットは、さいわいにもその後、クラブジャズ的な方面で再評価され(この再評価というのはすごく嫌な言葉なのだが、使わざるをえないよなー)、ローレンスと同じくようやく日本のジャズリスナーもちゃんとした扱いをしてくれているものと思う。一時は、「カルロス・ガーネット? 最悪」みたいな感じでマイルスのアルバムを評する向きが多くて、私は悲しかった。本作でもわかるが、めちゃめちゃいいテナーなのである。高音から低音まで柔らかな音色(ちょっと柔らかすぎるぐらい)でブロウできる名手だし、こういう70年代的なテナーががんばっているのはありがたい。本作では、共演のラッセル・ガンがめちゃめちゃうますぎて、彼が吹くと主役のガーネットがかすみがちではあるが、3曲目のワンホーンでの「マイ・ワン」とか聞くと、ああ、ええ感じやなあと思う。渋いプレイもばっちりなのだ。リーブマンやショーターのように音楽的な深みを見せる、とか、めちゃめちゃすごいフレーズを吹く、とかいうより愚直なまでに真っ直ぐなテナーを訥々と吹くカルロス・ガーネット……ええやないですか。テナープレイがややヨレぎみなのもいいなあ。6曲目で聴かせるフラジオの濁り加減も最高だし、7曲目でのブロウもいい。曲も、9曲中8曲がガーネットのオリジナルということで、ものすごく意欲的なのである。ただ、その曲がちょっと間抜けな感じのものもあったりで、愛すべき感じであるのもよい(5曲目とか6曲目みたいな、めちゃかっこいい曲もある。個人的にはぶっきらぼうな8曲目が70年代っぽくて好き)。つまり、たぶんものすごく意欲的な姿勢でこのアルバムに取り組んだのだと思うが、それをあまり感じさせないところが渋いなあと思うのだ。奥平真吾のドラムも出しゃばらず、しかもキメるところキメまくり、暴れるところはしっかり暴れる感じでとても心得た演奏だと思う。傑作……ではないかもしれないが、愛すべきアルバムです。ジャズ喫茶とかならしょっちゅうかかるタイプのアルバムでは?