「THE FRINGE−LIVE AT ZEITGEIST」(RESOLUTION RECORDINGS 04001)
THE FRINGE
ガゾーンといえばフリンジだが、バップからモード、フリーその他、どんなセッティングでも軽々こなしてしまうガゾーンにとって、このグループは最右翼というか、いちばん過激な内容だとおもう。しかし、こういった過激・過剰なサックストリオにおいても、ガゾーンのうまさはただごとではなくて、奔放吹きまくりからフリーキーな展開まで、なにをやらせてもうますぎる。そう、ガゾーンはうますぎるのだ。あまりにうまくて、なにをやっていたのか心に残らないほどに。だが、フリンジにおけるガゾーンはやはりひと味ちがっていて、ギャーッとかブワワワッとかいった、典型的なフリーな部分でも、サックスという楽器はこうやってこういう風に吹けばそうなるんだよ、といったフリーなのに「お定まり」の展開があったりするのだが、一方では、ぎくしゃくして、聴いてるものの心に残る箇所もものすごく多い。きっと共演者がいいのだろう。そういうとき、ガゾーンは
うますぎるサックス吹きではなく、ひとりのインプロヴァイザーとして共演者の音を聴きつつ、全身全霊をかけて音をつむいでいる。このアルバムは非常に過激なコンセプトだが、その過激さは、たとえていえばビル・エヴァンス・トリオをテナーで表現したような過激さであって、パワフルでぐいぐいくるのに、なおかつめちゃめちゃアブストラクトである。パッと聴いただけではわかりにくいかもしれないが(そのあたりもビル・エヴァンスと似てるか?)、一度この快感を知るとたまらんようになる。重層的で分厚いハーモニーを即興的に奏でているという点では、たとえばオディアン・ポープ・トリオの真逆である。あまりスカスカでなく、あらゆる隙間を音で埋めて、聴き手の想像力をはばたかせる余地のない音楽だともいえる。それはそれでよい。ゲストのジョー・ロバーノは、個性の塊のようなひとだから、このトリオに格好の色づけをしている。サックスど阿呆ふたりがそろった、という点でも非常にマニアックでおもしろいアルバムだとおもう。