maurizio giammarco

「LIVE AT THE BIG MAMA」(SOUL NOTE 121374−2)
GIAMMARCO/LIEBMAN/HUMAIR/DI CASTRI

 ピアノレスで、フロントのテナーがこのふたりとならば買わざるをえない……という感じで購入。最近はまたテナーも吹くようになったリーブマンだが、ジャンマルコ(と発音するらしい。ギアマルコではなく)はブレッカー的なテナーと認識しているので、ふたりの激突はさぞやえぐい展開になるだろうと期待した(購入店で立っていたポップのあおりも、そんな感じだった)。その期待は半ば裏切られた。いえいえ、決して悪いアルバムではありません。こっちが勝手に、エルヴィンのライトハウスのようなものを想像したのがまちがっている。クエスト以後の内省的なリーブマンの世界がやはりここにも展開されていて、ギアマルコもそれに寄り添うような形での演奏となっている……ような気がする。もちろん、ときにはごりごりと吹きまくるような瞬間もあるのだが、すぐにしぼんでしまう……ような気がする。遙か昔、はじめてギアマルコの初リーダーアルバムをレコードで買ったときは「イタリアにもすごいテナーがいるもんだなあ」と感心し、いろんな人に聴かせたりして宣伝したものだが、その後、いっぱい出たやつをいろいろ聴いてもどうもそれ以上のものがないのは不思議。このアルバムでも、バップ風の曲でバトルがあるのだが、技の見せあいで終わっている……ような気がする。

「PRECISIONE DELLA NOTTE」(RIVERA RECORDS RVR−3)
MAURIZIO GIAMMARCO

 たぶん就職してすぐのころに買ったレコードだが、とにかく本作ではじめて、マウリツィオ・ジャンマルコというイタリアのテナーを聴いたのだ。金のないときに、全然知らないテナーマンのアルバムなんかよく買ったと思うよ。もちろん店頭で試聴させてもらって、あまりにかっこよかったので、どうしても欲しくなり、相当考えたすえに思い切って購入したわけだが、家に帰ってから全曲聴いてみて、あまりにもすばらしくて打ち震えた。「知らないテナー奏者のアルバムを買う」というのが私の趣味のひとつなのだが、そのルーツはたぶん本作を購入して大当たりだった、その経験がベースにあるのだ。だれでも知ってる奏者のアルバムを聴いて、よかったー、と思うのは、これは当たり前のことであって、知らないテナー吹きのアルバムを深夜、部屋でひとりで聴いていて、それがめちゃめちゃよかったときなど、ああ、このすごいアルバムのことを知ってるやつ、ほかにはおらんやろなあ、としみじみ思うほうが快感ではないか。これがいわゆる「泥沼にはまる」というやつで、というのは、めちゃめちゃいいやつに当たるまでにめちゃめちゃしょうもないやつもいっぱい買う(聴く)はめになるわけで、時間も金も馬鹿にならんのである。この時期にやたらと買った「知らないテナー」のレコードはその後たいがい売っぱらったが、CD時代になってからもこの悪癖(?)は続いており、なんやかんやよくわからんアルバムがいっぱい溜まっているのです。そしてもっと問題なのは、「このすごいアルバムのこと知ってるやつ、ほかにはおらんやろなあ」とニヤニヤしていても、じつは知ってるやつはじつはほかに山のようにいるわけで、単なる自己満足にすぎないのである。それに気づくと、だいたいアホなことはやめると思われるが、今でもたまに買ってしまうが、それは「知らないテナー」というのがキーワードなのである。それはさておき、本作の主役ジャンマルコは、このアルバムにおけるプレイはマイケル・ブレッカーにすごく似ている。しかし、音が太く、楽器がびんびん鳴っているが、シャープでメカニカルでトリッキーで、そのうえよく歌う、という私の好きなタイプ。楽器コントロールもすごくて、低音から高音まで(たぶん)楽に吹いていて、すっかり気に入ってしまった。ちょっとボブ・バーグにも似てるかも。そうかあ、こういうすごいひとがイタリア(というかヨーロッパ)にはいるんやなあ、と感心しまくった。当時アラン・スキッドモアはすでに聴いたことがあって、うわーすごいすごいと思っていたのだが、コルトレーン直系的なスキッドモアよりジャンマルコはずっと新しいタイプで、こういう世代が世界中に出てきたのだ、となんだか感動したのを覚えている。このアルバムで味をしめて、参加作をいろいろ聴いてみた。リンゴマニアというフュージョン(?)バンドを何枚か聴いたり、4ビートものも聴いたりしたが、これは……と思うものもなかにはあるが、やはり本作における感動を越えるものはなかった。マイケル・ブレッカーとやっているアルバムがあって、きっとブレッカーがふたり、みたいにすごいにちがいないと思ってわくわくして聴いてみたが、(もちろん)そういうサウンドではなかった。リーブマンとやってるやつ(上記にレビュー)も、このふたりなら……という期待を上回ってはくれなかった。というわけで本作こそ(私が聴いた範囲では)ジャンマルコの最高作。とにかく本作はテナーのワンホーンジャズのアルバムすべてのなかでも私にとってかなり上位にくるフェイバリットアルバムなのであります。もし、見かけたら聴いてみても損はないと思います。