globe unity

「COMPOSITIONS」(ECM RECORDS UCCE−9072)
GLOBE UNITY

 メンバー的にはあまりに豪華すぎる顔ぶれだが、音楽的なレベルの高さや結束力もめちゃくちゃ高い。高校生のときだったか、グローブユニティが来日した。そのときの公演の模様をラジオで聴いて、私はかなり感動して、すっかりグローブユニティが好きになった。エアチェックのテープを今も持っている。で、その当時たしか、即興ばかり集めた「インプロヴィゼイションズ」というアルバムとコンポジョンものばかり集めた「コンポジションズ」が同時に発売されたのだ。もちろんこの2枚は表裏一体の作品で、両方聞かねばならない性質のものだが、私は「インプロヴィゼイション」しか買えず、ずっと残念に思っていたら、ようやくCDでこちらも買うことができてめちゃうれしい。エアチェックに入っているレイシーの曲などはこちらに収録されているのだ。1曲目は先日亡くなったケニー・ホイーラーの曲で、トロンボーンソロによるエキゾチックでクラシカルなメロディの提示、それを金管が補強し、ピアノやサックスによる再提示、そして、曲調が変わっていき……というあたりは興奮しまくる。そして、おそらくゲルト・デュデュクによる激情的なテナーソロがはじまりフリージャズ的な様相になる。しかし、その随所でリフが入ったりときちんとした編曲がなされていて、構成もお見事。2曲目はシュリッペンバッハの曲で、ピアノに導かれるようにして上昇フレーズで構築された奇妙なテーマがはじまり、それがかなり分厚くオーケストレーションされていく。おもしろいなあ。トロンボーンソロがはじまり、それをリフが押し出す。つづいてたぶんレイシーのソプラノソロ。そのバックでチューバが異常なラインを吹きまくっている。そのあとたぶんミッシェル・ピルツのバスクラ。リフのあと、ポール・ロヴェンスの短いソロがあってテーマ。3曲目はギュンター・クリストマンの曲で、最初は音合わせというかチューニングめいたところから集団即興になり、それをおそらくクリストマンのトロンボーンがリード(?)していく展開になる。さまざまなリフがめまぐるしく並ぶ。ロヴェンスのパーカッションにも注目。一旦終わって、今度はまたトロンボーンが前面にでた即興になり、べつのリフ。そしてまた一旦終わり、トロンボーンの無伴奏ソロになり……といった展開が繰り返される。こういったぐじゃぐじゃの集団即興と見せかけて(べつに「見せかけて」いるわけではないだろうが)それがコンポジションに収れんしていくような演奏はフリージャズ的なオーケストラの得意とするところだろうが、この曲ではその見事な例が聴ける。4曲目はエンリコ・ラヴァの曲で、下降フレーズが延々続く、かなりジャズっぽい曲。楽しい曲調だが、よく聴くと(よく聴かなくても)かなりヘンテコな編曲がなされていて笑える。テーマのあと、ドラムとトロンボーンの激しいデュオになる。そこにおそらくラヴァのトランペットが入ってきて、ピアノも入り、かなりやかましいトリオになる。だんだん人数が増えていき、ぐじゃぐじゃになるが、ラヴァのトランペットが一貫して高音で自己主張する。そんななかリフがはじまり、次第にテーマが現れていき、エンディング(延々と音を伸ばす)。お茶目な演奏で、グローブユニティのユーモア感覚を見ることができる。5曲目はマンフレッド・ショーフの曲で、いきなりエヴァン・パーカーとおぼしきソプラノの循環呼吸による無伴奏ソロ(ぴーぴー、ぴーぴーいってる)からはじまり、そこに静かにほかの音が加わっていく。ゆったりとした美しいテーマがはじまっても、ぴーぴーいうのはずっと続いている、という、これめちゃめちゃおもろいやん。そのあと幻想的なピアノソロになる。ショーフの曲なのに、全然トランペット出てけえへんなあ。感動的なオーケストレーションがほどこされた美しいテーマがまたはじまり、それをたぶんレイシーのソプラノがリードしていく。最後はレイシーのソプラノのカデンツァでしめくくられる。6曲目は、ラジオで聞いたときからずっと好きだった、レイシーの曲で、この曲でレイシーはなぜかピアノを弾いている。シュリッペンバッハは指揮に徹しているのか? ごんごんと重く響くピアノと、うねうねとした管楽器。まさにタイトル通り「虫(ワームズ)」、それも尺取虫や芋虫が這っていくさまを思い浮かべるような曲。異常な音の重ね方がかっこいい。ひたすらテーマを変奏していくような演奏で、ソロらしいソロはない。スタイリッシュだなあ。それが6分ぐらいしたところで突然フリーな感じになり、レイシーと思われるソプラノとピルツとおぼしきバスクラが吹きまくり、そこにほかのメンバーがノイズのように入ってくる展開。ここも、先入観のせいか、なんだか「虫」っぽい(なんのこっちゃ)。そして、ふたたびくねくねとしたテーマが登場して終演となる。高校生のときの私はこの演奏に強く魅かれたのでした。ラストの曲はシュリッペンバッハの作曲で、リズミカルなテーマ。なんだか「キアズマ」を思わせるような箇所もある。テンポがどんどん速まっていき、パワーミュージック的になって、テナー(エヴァン・パーカーでしょう)が登場して激しいソロを吹きまくる。べつのリフがはじまり、そのあいだテナーソロは継続。そしてテーマにつながる。そして、マンフレッド・ショーフ(じゃないかな)のトランペットがハイノート中心にこれも激しいソロを展開。リズミカルなリフが戻ってきて、ピアノソロになる。そのあとピアノによるテーマの提示は、やっぱり「キアズマ」っぽいなあ。最後はテュッティでエンディング。あー、おもしろい。もっかい聴こ。傑作だと思います。なお、シュリッペンバッハのリーダー作と考えることもできるが、一応グローブ・ユニティについては独立項を立てることにした。