babs gonzales

「BABS GONZALES 1947−1949」(CLASSICS RECORDS 1124)
BABS GONZALES

 バブス・ゴンザレスといえば、ジョー・キャロルやエディ・ジェファーソンとならぶバップスキャットの帝王だが、だれがなんといおうと私は大好きですね(だれもなんとも言ってないけど)。最初に好きになったのはベニー・グリーンの「マイナー・レボリューション」に入ってる「アンコール」という曲(ジャケーの「フライングホーム」のソロに歌詞をつけたもの)でのボーカルにノックアウトされ、その後、オーケイに録音したジョニー・グリフィンとの演奏でしびれまくり(グリフィンはゴンザレスに捧げる曲も作っていて、ビデオで演奏している)、トドメのようにはまったのが、「ビバップ・プロフェッサーズ」というキャピタル(?)のレコードに2曲だけ入っている演奏で、それこそが、本作にも収録されている「キャピトライジング」(レーベルにヨイショした歌だよね)ともう一曲だったのだ。このアルバムは、そのあたりをクロノジカルに網羅した完全盤で、全24曲。「バブス・スリー・ビップス・アンド・ア・バップ」名義のものが12曲(ピアノがダメロンだったり、ドラムがロイ・ヘインズだったり、クラがトニー・スコットだったりとなにげに豪華)、「シックス・ビップス・アンド・ア・バップ」名義のものが4曲(デイブ・バーンズ、ベニー・グリーン、ジェイムズ・ムーディー……と管は凄い)、「バブス・ゴンザレス・アンド・ヒズ・オーケストラ」名義のものが8曲となっている(オーケストラといっても3〜5管編成だが、メンバーが豪華。セッションによって違うが、ジェイ・ジェイ・ジョンソン、ベニー・グリーン、ジュリアス・ワトキンス(!)、ソニー・ロリンズ(!)、アート・ペッパー(!)、ハービー・ステュワート、ドン・レッドマンなど管の充実ぶりはすごく、リズムセクションもウィントン・ケリーやロイ・ヘインズがいたりする)。で、さすがにこれだけバップスキャットだと飽きるが、じつはそうではなく、いわゆるスタンダードも入っていて、そういう曲ではちゃんと歌詞を歌うし、それがまた音程正しく、じつにきっちりと歌い上げる。またバラードなどではクルーニーかと思うほどの甘い歌声で朗々と歌ったりする。この時代の「バップスキャット」のひとたちの立ち位置というものを感じます。つまり、次代の最先端である「ビバップ」をやるトンガッたボーカリストというだけでなく、ちゃんと商売になるようにいろいろレパートリーがあったわけですね。それにしても、バップ曲というのは、音をちょっと外したような複雑なメロディが売りだが、それをバシッと歌いまくるバブスには惚れるしかない。正直、管楽器だとハーフタンギングなどの「呑む音」を使うことで、微妙なアーティキュレイションを表現し、それがビバップというものの本質だと思うのだが、バブスはそういうところは呑まずに全部しっかり発音するので、バップだがバップでない……みたいな変な現象を呈しているように思う。しかーし、それが逆にバブス・ゴンザレスの個性であり、魅力なのだ。ときどき取り出して何曲かずつ聴くのがいいんじゃないかと思う。宝物のようなアルバム。共演者では、さすがにロリンズがいい感じ(まだめちゃめちゃ若いのに)。