「DEBENGE−DEBENGE」(SILKHEART RECORDS SHLP−112)
DENIS GONZALEZ NEW DALLASORLEANSSIPPI FEATURING CHARLES BLACKEEN
QUARTET
デニス・ゴンザレスというトランペッターがいろんなメンバーを集めて演奏している本作は、私の大愛聴盤である。トランペットはゴンザレスとあのマーロン・ジョーダン(たぶん、相当初期の演奏だと思う。このアルバムが録音された年に、マーロンは初リーダー作も発表している。早熟〜っ)。サックスはチャールズ・ブラッキーン(そうです、ブラッキーン目当てで買ったのですが大正解でした)とキッド・ジョーダン(アルトを吹いている。そしてキッド・ジョーダンはマーロン・ジョーダンの父親だから、そういう縁でマーロンが参加しているのだろう)。めちゃめちゃ長いバンド名からもわかるとおり(わかる?)、ダラス、ニューオリンズ、ミシシッピーという3都市にまたがったメンバーによる演奏で、音楽的にもそういう地域性を複合させたものになっている。レーベルも同じシルクハートで、ブラッキーンが参加しているということで、ブラッキーンのアルバムと音楽的にもかなり似たところがある。つまり、かっこいいコンポジションとアンサンブル、ピアノレス編成で熱い(あるいは暑い)ソロの応酬、どす黒いブラックジャズの臭いがぷんぷんする点……などである。リーダーであるデニスはもちろん、キッド・ジョーダン(アルトの音は、ややよれよれだが、熱い演奏である)、チャールズ・ブラッキーンといった百戦錬磨の猛者たちの豪快・豪腕・豪放、しかも大味ではない、一筋縄ではいかぬソロを聴いているだけでうれしくなってくるが、マーロン・ジョーダンは若さに任せたテクニック披露型のビバップ的ソロで、彼だけは浮いている。しかし、ここまでうまくて、ここまで凄かったら、うん、これもOKだ、と聴いているものにうなずかせてしまうだけのパワーとパッションを持ったソロである。たぶん、普通のジャズのリスナーは、このアルバムを聴いて、マーロン・ジョーダンだけかっこよかったわあ、という感想を持つかもしれない。というようなごった煮な感じの演奏ではあるが、コンポジションやコンセプト、音楽的構造などがしっかりしているため、ぐちゃぐちゃにはならず、一本芯の通った骨太な音楽になっている点も高評価。さっきも書いたが、フリージャズが好きとか日頃言ってるわりに、じつはこういう音が結局いちばん好きなのかもしれないなあ。
「NAMESAKE」(SILKHEART RECORDS SHLP−106)
DENIS GONZALEZ NEW DALLAS SEXTET
もともとはチャールズ・ブラッキーン目当てで買ったわけだが、うちにあるこのアルバムには、カタカナで「ダグラス・ユワト」と赤マジックでサインが書かれている。ずっとまえに、神戸でジョゼフ・ジャーマンとダグラス・ユワートのライヴを主宰したとき、ダグラス・ユワートのリーダー作を持っておらず、このアルバムにサインしてもらったのである。このアルバムも大好きで、一時は毎日聴いていた。「ディベンジディベンジ」にトランペットがふたり入っているように、本作も2トランペットで、リーダーのデニス・ゴンザレスのほかに、あのサン・ラ・アーケストラで有名なアーメッド・アブダラーが入っている。「ディベンジ・ディベンジ」よりはちょっとフリー色が強いかもしれないが、ファンキーな曲も入っていて、まあ、印象はおなじようなもんかな。チャールズ・ブラッキーンがらみではなんども書いているように、熱くて骨太な演奏が続く。ダグラス・ユワートはアルトにバスクラに大活躍で(とくにアルトのソロは凄まじい。めちゃめちゃかっこいい)、アーメッド・アブダラーも触ると火傷するような熱いソロを展開する。もちろんチャールズ・ブラッキーンのテナーはめっちゃええやんけ……というわけで、これまた愛聴盤なのであります。
「MIDNIGHT SUITE」(CLEAN FEED CF020CD)
DENNIS GONZALEZ NY QUARTET
シルクハートのころのアルバムは好きだったなあ、と言いつつ、聴いてみると、なるほど、音楽の手触りはあのころと変わりない。1〜3は「ニューヨーク・ミッドナイト組曲」という組曲になっているようだが、そういうことはあまり気にしないでも聴ける。すばらしいドラムとベースによる骨太かつメチャうまのリズムセクションが支えてくれるおかげで、フロントのふたりは自由奔放に好き勝手ができる。デニス・ゴンザレスの演奏は、フリージャズというには構成もしっかりしているし、ソロもコードやモードに基づいた、ちゃんとしたフレーズを積み重ねていくものが多いので、ハードバップ〜モードジャズなのだが、ブラックジャズ的な激しい表現がフリーっぽい領域まで踏み込んでしまった……的な感じなのであり、それは私にとっても美味しいところなのである。また、ブラックミュージックとしてのジャズ、という意識が強く感じられ、(めちゃめちゃ上手いはずの)エラリー・エスケリンもそれをうまく表現しえている。しっかりしたトーンで、いつもより不器用な感じで、少しずつ音を積み上げていき、最後に感情をほとばしらせるような演奏になっていて、エスケリンがものすごく好印象になった(主役のゴンザレスを食ってしまってる感もあり)。どの曲もドラムが目を見張るほど凄くて、エスケリンのテナーとドラムのデュオになるあたりもそうだし、それぞれのバッキングも、多彩なアイデアを超絶技巧でぶち込んできて、すごくよかった。このアルバムのどこに興奮したかというと、全編通してのドラム、と言ってしまってもいいかもしれない。だが、リーダーのデニス・ゴンザレスは相変わらずで、この相変わらずさが、テクニシャンを集めたこのアルバムのゆったりした雰囲気を出しているのかなあとも思った。私は、このあたりのジャズが好きで、ラフでタフでいい加減でちょっとフリーで理論より感情優先でしかもここぞというところをビシビシ狙って攻めてくる。このアルバムはマラカイ・フェイヴァースに捧げられていて、それがこのアルバムの内容をもっともよく表しているかもしれない。粘っこい手応えの、もっともストレートアヘッドな「ジャズ」である。