「ANCESTORS,MINDRELES,NAGILA,MONSTERS」(TZADIK TZ8127)
KLEZ−EDGE
ぶわーっ、めっちゃええやん! びっくりした。バートン・グリーンといえば、ESPにその名を冠したアルバムを残すフリージャズ初期の大物で、私にとっては、ケシャバン・マスラクとのアルバムが印象に強いが、正直、過去のひとだと思っていた。いやはやとーんでもありませんでしたね。クラリネットにペリー・ロビンソンが入っているが、このひとも古いフリージャズマンで、ESPにも録音を残している。そういった「ESP」つながり、みたいなものがおもしろいかなあ、と思って買ったのだが、そういった「しょーもない過去」吹き飛ばすぐらいの、今を生きるミュージシャンによる今の音楽が詰まっていた。写真を見ると、参加メンバーは全員ジジイだが、彼らが集まって、とんでもない破壊力のある音楽を作りだしている。それにしても、バートン・グリーンってジューイッシュだったんだなあ。曲もいいし、メンバーはみんなすごいプレイをしているし、言うことないが、そんななかでも特筆すべきはボーカルで、このボーカルは怪物ですよ。バップスキャットでクレズマーを表現しているのだが、なにかが憑依したような、異常さを感じるほどの強烈ヴォイスパフォーマンスは、バブス・ゴンザレスやエディ・ジェファーソンよりも、巻上公一を想起させる。それほど切迫感のある、ただごとではない感じのボーカルで、このひとを聞くためだけに買っても損はない。いやー、ええもん聞かせてもらいました!
「VARIATIONS ON A COFFEE MACHINE」(PRODUCTIONS OF KHARMA
KHARMA PK 6)
BURTON GREENE
A面はすべてバートン・グリーンのピアノソロ。3曲とも気合いの入ったすばらしい演奏(オリジナルのほか、「ネイマ」も演ってる)。テンションも高くて、清冽なインプロヴィゼイション。しかし……! 本作の価値のほぼ99パーセントは、私にとっては、B面の2曲、つまり、ケシャバン・マスラクが参加したパートにある。これはすばらしーっ。カタカナで書くとスバラシーッ。ケシャバンはテナーに徹しており、彼のいちばんいい部分が全編出まくりの最高の演奏。77年の録音だから、私が生ではじめてケシャバンのライヴに接するよりずっとまえだが、こういう真摯な演奏をしていた時期もあったんだなあ、と思った。テナーの音はあくまで野太く、豪快で、上から下まで均一に鳴りひびいており、フリーキーな演奏からメロディックなプレイ、ソウルフルでR&Bっぽいドスのきいたブロウまで自在に駆け回る。バートン・グリーンというフリーの大物を相手に存分に吹きまくるケシャバンの存在感はすごい。これはもう名盤といっていいのでは……というのはいい過ぎでしょうか。いやいや、そんなことはない。たとえばヴァンダーマークなどの先駆(というのはイヤな表現ではあるが)という意味でも、この演奏は最高に立派なものである。愛聴しまくっています。CD、出てるのかなあ……。