tiny grimes

「TINY GRIMES」(BLACK & BLUE CDSOL−46058)
TINY GRIMES

 めちゃくちゃ良くて毎日聴いてる。タイニー・グライムズといえば、ジャズ的にはパーカーとやったサヴォイの「タイニイズ・テンポ」とか「レッド・クロス」とかが有名なのだろうと思うが、そんなことよりもなにしろまずあの超絶技巧のアート・テイタムのところのギタリストだというだけで最敬礼するしかない。しかし、実際にこのひとのやりたいようにやった音楽を聴くと、すたすらジャンプし、ロールし、グルーヴし、スウィングしまくるシンプルなノリノリの演奏なのである。個人的にはアーネット・コブとこの時期にフランスで演奏したライヴなどが最高だと思っているが、まあどれもこれもすばらしい。本作はめちゃくちゃノリのいい演奏ばかりで、4弦ギターでここまで歌いまくれるなら、ギターに弦は六本もいらんやろ、と思ってしまう。ぶっ太い音のギターで、どこが「タイニイ」なのか……と思う。管楽器と同じようにブロウしている。本作はメンバー的に、ジェイ・マクシャンとかが入っていて、タイニー・グライムズとジェイ・マクシャン……? しかも、フランス人のオルガン入り……? などといろいろ「?」マークが頭に点灯するが、心配いらない。全曲めちゃくちゃええ感じの演奏ばかり。マクシャンのコロコロコロ……とロールするピアノもしっかりバンドに溶け込んでいるし、テナーのジョージズ・ケリーというひともしっかりブロウしまくっていて(上手い!)、ものすごーく敷居の低い、ひたすら楽しい音楽であり、いわゆるオルガンジャズやルイ・ジョーダン的なジャンプミュージック、もっと言うとシャッフル的な3連や跳ねるリズムが初期のロックンロール的なテイストもあって、なーんも考えることなくリズムに身を任せればいい感じの演奏である。しかも、超上質! こういうのはやっぱり「気質」というか、もって生まれたもんなんかなあ。テナーのいなたいソロもすばらしい。というわけで傑作です。なにしろタイトルがそのままずばりだから傑作でないわけがない。セッション的で一曲がけっこう長いがダレていない点もいいですね。とにかくタイニー・グライムズというひとは、グラント・グリーン(の初期)のように、太い単音を中心にテナーサックスのようにホンーライクにギターをブロウさせる名人だと思う。といって、ギターらしい必殺技も多数心得ていて、ブルーズのことは良く知らないが、ちょっとゲイトマウスっぽいところも感じる。わけのわからんファズみたいなのをかけたソロもあって、いやー、人間の作った音楽、っつー感じであります。バンドの一体感もはんぱない(5曲目とかすごい!)。盛り上がること間違いなし。傑作!