「TEXAS TENORS」(JAZZ MARKRECORDS 104)
THE PAUL GUERRERO QUINTET FEATURING JAMES CLAY & MARCHEL IVERY
ドラマーのリーダー作であるが、タイトルがなぜか「テキサステナーズ」で、その名の通り、ジェイムズ・クレイとマーシェル・アイヴリーという2テナーをフィーチュアしている。ジャケットが異常にしょぼくて、なんだかよくわからない、鳥の絵が描かれている。この絵のどこが「テキサステナーズ」なんかなあ……。ジェイムズ・クレイといえば、自己のリーダーアルバムよりも、「テナーマン」という、ローレンス・マラブルのアルバムがいちばん名高いように思うが、あれもドラマーのリーダー作であり、クレイってそういうひと? さて、我々はテキサステナーというと、ハーシャル・エヴァンスにはじまり、イリノイ・ジャケー、アーネット・コブ、バディ・テイト、バッド・ジョンソン、ブッカー・アーヴィン、ウィルトン・フェルダー……それから連綿と続く、無骨で、ファンキーで、ぶっとい音のブルースサックスを連想するわけだが、なかにはテキサス出身というだけで、あんまりそういうイメージのないひとも(もちろん)いる。このふたり、とくにジェイムズ・クレイなんかは、どっちかというと西海岸のイメージが強くないでしょうか。音も細いし、フレーズもストレートなバップで、ワーデル・グレイや初期のデクスター・ゴードンを連想させる、たどたどしく歌を歌うという感じのひとで派手さはかけらもない。もうひとりのマーシェル・アイヴリー(と発音するのかなあ)というひとは、まったく知らないが、ダラスを中心に活動しているらしく、38年生まれというから、もうけっこうな年齢(まだ御存命かどうかもしらん)。80年代以降の吹き込みがけっこうおおい。ソニー・ロリンズからの影響が大きいという話だが、コルトレーンに捧げるアルバムでジャイアント・ステップスをやったりしている。ますますテキサステナーっぽくないなあ。しかし、このアルバムで聴くかぎりでは、音色がヘロッとした感じ。クレイは線は細いがしっかり鳴っている感じ。フレーズはどちらもビバップ的で双子のようだ。2曲目のバラードではクレイのうまさが光る。3曲目の「サムデイ……」はトリオ。4曲目はピアノソロ。2テナーの意味がいまいちわからん。B面は1曲目は「ビリーズバウンス」。先発はクレイでさすがに8分音符のバップフレーズは見事。ハードバップというよりやはりビバップの香り。ピアノをあいだに挟んでアイヴェリーのソロもうまいが、ちょっと泥臭い。そこがいい、という通人ももちろんいるだろう。私も、流麗にぶっ飛ばすようなソロよりも、こういう風に考えながら訥々と歌を歌っていく感じは好きです。2曲目ジーニー(あの曲ではない)はマーシェル・アイヴェリーのワンホーン。ぽきぽきした硬質なノリは、なるほどロリンズ的なところもあるが、たとえていうなら最も初期のプレスティッジのころのロリンズに似ているかもしれない。3曲目も「ウィー」でバトル。クレイのソロは力強くて完璧。つづくアイヴェリーも奮闘している。4曲目はクレイフィーチュアのスタンダード。ミディアムでよくスウィングする演奏。テーマの吹きかたからして堂に入ったもんですなー。クレイって、昔からリードをキーキー鳴らすミストーンがあったり、フレーズがヨレヨレっとなったりするが、そこも含めて「クレイ」なんですね。ジャズ喫茶などではウケるのではないかと思われる渋いアルバム。タイトルだけ見て、これはすさまじいバトルかも……と思って買ったらダメですよ(それは私)。