「IN ST JOHANN」(GAFFER RECORDS GR045)
THE AMES ROOM
エイムズ・ルームというのはこのトリオの名前らしい。ウィル・ガスリーのライブの物販で買ったが、めちゃくちゃ気に入った。アルトサックスのジャン・リュック・ギオネは即興演奏とコンポジション両面で有名なひとで、日本人との共演も多く、オルガンも弾くし、エレクトロニクスも使うが、ここではアルト一本で勝負している。フリーインプロヴィゼイションといっても徹頭徹尾ビート感があり、それはおもにガスリーの手数の多いドラムによって醸し出されているのだが、ベースの思い切りのよい音の出し方とあいまってつねにかなりパワフルで過激で刺激的なポリリズムがひたすら続き、そこにギオネの多彩極まりない音色やフレーズがからみつき(これもポリリズムを生み出している)、めちゃくちゃかっこいい。バンド名でもある「錯視の部屋」というのは、3人で十数人分の演奏が行われているように錯覚させる方法論……という意味かもしれない(ちがうかもしれない)。とにかく延々聴き続けても飽きないし気持ちいい。3人とも汲めども尽きないアイデアを持っていて、それをひたすらぶつけ合っている感じ。フリーなリズムがなく、誤解を招くかもしれないが非常にダンサブルである(どこがダンサブルやねん、と言われるかもしれないが、私にはそう聞こえるのです)。こんなにうまくいってるトリオというのもなかなかないのではないか。3人ともバカテクで、テクニックによって成り立っている表現だと思う(もちろんセンスもすごいのだが)。ただただ最初から最後まで快感、快感、快感、快感……快感の嵐である。はまったら抜けられない麻薬的な音楽。全然ちがうと言われるかもしれないが、ある意味ダニー・マッキャスリンとマーク・ジュリアナを連想させる……ような気がする。こういうのはJTNC的にはどういう評価なのだろう。まあ、とにかくアホほどかっこいいのでぜひ聴いていただきたい魔法の音楽です。傑作! だれがリーダーだかわからないので最初に名前の書いてあるジャン・リュック・ギオネの項に入れた。