will guthrie

「STICKS.STONES & BREAKINGBONES」(GAFFER RECORDS GRO32)
WILL GUTHRIE

 ガスリーのドラムソロアルバム。なにしろドラム一台(と小物類)でオーケストラのようなサウンドを作り出し、それを延々40分とか持続してどんどん盛り上げてしまうひとだから、このぐらいの演奏は屁の河童なのかもしれないが、とにかくびっくりする。1曲目は複雑で「間」をいかした演奏ではじまり、いろいろなフレーズが順次出てくるのだが、やがて継続的なビートが現れる。ひたすらビートが心地よい。最後のほうはあまりのかっこよさとそれを支えるテクニックに悶絶する。2曲目は主に小物類を使って空間を感じさせるカラフルでフリーなサウンドではじまる。ビート感はなくてもリズムは強烈に伝わってくる。そのリズムの破片のひとつひとつが、小川が集合して大河になっていくかのごとく凄まじい奔流となって海に向かって流れ込む……というような感動的に演奏。3曲目はいきなりドドド、ドドド、ドドド……というフロアタムを思いっきりでかい音で叩きまくる原始の律動のような野蛮ではじまり、それが徐々に変化していくのだが、シンプルすぎるほどシンプルなリズムは変わらず、ただただ「ものを叩いてリズムを作り出す」快感に身を任すのみ。まったくぶれることなく、ひたすら戦車のように一直線に驀進する。凄まじいスピード感で、あれよあれよといううちに飲み込まれて押し流される。「リズムに溺れる」「リズムに浸る」……そんな感じ。最後はとにかく「持っていかれる」。あまりの迫力に目が点になる。いやー、参った参った。傑作です。