「GRYFFGRYFFGRYFFS」(MUSIC & ARTS CD−1003)
GUY−GUSTAFSSON−STRID TRIO WITH MARILYN CRISPELL
ライナーノートによると、ガスタフスンは17歳のときに、ブロッツマンの「マシンガン」を聴いてフリージャズに目覚め、あとはこの道一直線だそうである。たしかに、ガスタフスンのへしゃげたような、濁ったサウンドは、ブロッツマンを連想させるところがあるが、その表現力の引き出しの多さに関しては、何がなんでも剛速球一本勝負(というわけでもないけど、まあ、球種は4つぐらいかなあ)のブロッツマンに比べて、ガスタフスンは百八つぐらいの球を使い分け、圧勝だと思う。このアルバムは、バリー・ガイのレギュラートリオに、ゲストとしてマリリン・クリスペルをくわえたものだそうで、正直言って、マリリン・クリスペルのピアノは余計な気もした。バリー・ガイ〜ガスタフスンという組み合わせは、いわゆる普通のフリーインプロヴァイズドになりがちで(ただし、レベルはめちゃめちゃ高い)、ガスタフスンが自己のリーダー作でみせる、あの圧倒的な個性豊かな音楽世界はあまり見いだせず、かわりに腕達者たちの純粋に即興するよろこび、みたいなものがそこにどーんとあるけれど、なんとなくクリスペルが邪魔をしているようにも聞こえる。それは、クリスペルの罪ではなく、ピアノという「不自由な楽器」での即興演奏につきまとうある種の問題なのだろう。ガスタフスンとバリー・ガイの表現力を味わうには、何の問題もないが。
「SINNERS,RATHER THAN SAINTS」(NO BUSINESS RECORDS NBLP6)
BARRY GUY & MATS GUSTAFSSON
レーベル名がいいではありませんか。こんなマイナーなアルバム、しかもLPを聴くことができたのは、直接マケドニアにメールを書いたという添野知生さんのご厚意による。ありがたやありがたや。で、聴いてみて、驚いた。めっちゃええやん。バリー・ガイとマッツは、マッツがザ・シングとかでどんどん過激な表現を求めるようになるちょっとまえまではしょっちゅう共演していたわけで(もしかすると、今でも共演しているのかもしれない)、本作はそんなバリーとのコラボレイションのなかでも最高傑作ではないかと思えるほどのかっこよさだった。一曲目から、みずみずしく、自信にあふれ、パワフルな表現の連続で、すっかり聴きほれてしまった。これはええわー。こんないい作品がLPとはなあ……いや、レコードが悪いとはいわないが、聴けるひとが限定されるからなあ。それぞれのソロもたっぷり聴けるし、バリー・ガイの代表作といえるのではないか。マッツはバリサクとフルートホンに徹しているが、まるで気にならない。入手困難だとおもうが、もし入手できる機会(あるいは聴ける機会)があったらぜったいに逃してはいけません。傑作。