「FIRST TIME I MET THE BLUES」(CHESS PLP815/6)
BUDDY GUY
バディのチェス吹き込みの傑作ばかりを収録した二枚組。とにかくヒステリックなシャウトと、これまたヒステリックなスクゥイーズギターがめちゃめちゃかっこよく。はまりまくった。どろどろ、というより、とろとろと熱く、とろけた感じといったらいいのか、ときどきマグマが噴火するようにぶちきれる。マディやリトル・ウォルター、ジミー・ロジャース、サニーボーイなどと比べても明らかに都会的に洗練されていて、バンドとしてもかっちりしており、音楽的構成もしっかりしているうえ、自分のええとこをガーンと押し出すというところを心得た作りになっており、ああ、これがモダンブルースというものか、と納得した覚えがある。でもって、ジュニア・ウェルズとのコンサートを観に行ったのだが、ときおりハッとするような瞬間があるものの、基本的にだらだらと一曲が長く、途中でダレる演奏が多かった。やはりこのチェスのころがいちばん輝いていたのかもしれない。今回久々に聞き直して、聴きながらなんども「キーッ」と顔をしかめざるをえなかった。それほど脳天直撃の音なのである。このあとの作品もいろいろ手に入れたが、結局全部売ってしまった。私にとってバディ・ガイはこの二枚組で十分である。正直いって、ジャンプ・ブルースとかばっかり聴いていると、こういうエッジのたった、鋭い演奏というのを身体が要求するようになる。
「HEAVY LOVE」(SILVERTONE RECORDS 01241−41632−2)
BUDDY GUY
バディ・ガイというとチェスのころのブチ切れたようなギターソロとヒステリックなシャウトはめちゃくちゃ好きだったのだが、その後、正直あんまり興味を持てなかった。というのも87年に観にいったブルースカーニバルでのジュニア・ウエルズとの演奏があまりにダレきった(ように私には聞こえた)ものだったからで、それ以来、どうでもいいやと思っていた。なので、91年の豪華ゲストを入れて復活ののろしをあげた「ダムン・ライト・アンヴ・ガット・ザ・ブルース」もタワーレコードの試聴で聴いただけだったが、本作(98年)は豪華ゲストも目新しい趣向もなく、手堅いメンバーで固めたバンドでの演奏にもかかわらず(ホーンもいない)、非常に気に入ったのです。リズムもギターもボーカルもめちゃくちゃしっかりしているし、ヘヴィ・ラヴというタイトルどおりかなりヘヴィなビートの曲が多いが、ルイ・ジョーダンの楽しい「サタデイ・ナイト・フィッシュ・フライ」なんかも入っているし(まあ、ルイ・ジョーダンはそれだけ流行っていたのだろうなあ)、ソウルっぽいナンバーやゴスペルっぽい曲も手応えのある演奏で、選曲も上手くいってるように思う(えらそうなこと言ってすいません)。マディの「アイ・ジャスト・ウォント・トゥ・メイク・ラヴ・トゥ・ユー」はオルガン入りです。まあ、はっきり言って、バディ・ガイのギターはもっともホンカーに近いと思うので好きなのである。音の濁り具合や盛り上げ方、ねちっこさなどもちょうどいいエンターテインメントのようであとちょっとでブチキレそうな感じもあり、このアルバムはそのあたりがものすごくバランスよくプロデュースされている気がする。泣き節のようで、それを通り越してしまっている……やっぱりバディ・ガイはこの「キーッ」となる感じがないと嘘ですよ。壮絶きわまりないソロもあり、やはり心を動かされる。日本盤にはボーナストラックが入っているそうだが、聞いたことはありません。