「不失者の秘儀伝授」(DOUBT MUSIC DMF−136)
静寂
「何があっても生き抜く覚悟の用意をしろ」(DOUBT MUSIC DMF−137)
静寂
凄いよなあ、こういうひとがおるんやなあ、とあらためて感慨を覚えた。灰野さんの演奏を聴くときは、いつも「ワン・アンド・オンリー」という言葉が浮かぶ。ブルースがベースになっているのだとは思うが、とんでもなく突き抜けてしまった音楽だと思う。この演奏が、たとえばパンクロックなどで言葉をぶつけるようなタイプの演奏とどこがちがうねん、と言われると知識のない私には答えられないが、これだけはいえる。リズムがどうの、即興がどうの、フレーズがどうの、詩の内容がどうの、というより、ここにあふれているのは、なんだかわからないけどものすごく熱く煮えたぎった「意志」で、それがどろどろと沸騰し、スピーカーを突き破って、我々の脳に押し寄せてくるような、そういうタイプの音楽だ。小手先ではない、古代から厳然としてそこにある、いや、人間の身体のなかに綿々としてある、とてつもない真実を延々と見せられているような気さえする。これは、よい悪いを超越した悪魔じみた快感である。ある意味単調なのだが、ずっと聴き続けていられる音楽だ。世のなかには単純で繰り返しでしかも快感な音楽はたくさんある。いや、そちらの数のほうがおそらく多い。しかし、このグループの演奏は即興だし、過激だし、ノイズなのに、そちらに属する、という離れ業ではないか。これは私の妄想かもしれないが、そんなことをちらっと思ったりした。ボーカルもギターもベースもドラムも、聴いている私に「まとわりついてくる」ようだ。二枚目のラストは天地茂の「昭和ブルース」の超変則バージョンで、思わず笑ってしまうすごさがあるが、聴き終えてみると、なるほどこれはたしかに「昭和ブルース」なのだ。別々のアルバムではあるが、一種の二枚組ということで、まとめて取り上げさせていただいた。