「SAMUEL HALLKVIST & VARIETY OF RHYTHM」(BOOGIE POST RECORDINGS BPCD024)
SAMUEL HALLKVIST
サミュエル・ハルクヴィストと読むらしいです。12人のメンバーが参加しており、それぞれ「チーム・ポルトガル」「チーム・ジャパン」「チーム・US」などと銘打たれているうえ、曲は(CD上では)43分の1曲のみということで、おそらく数か国でそれぞれのメンバーで録音したフリーインプロヴィゼイションをコラージュみたいにしたもの……と思って聴いてみたらさにあらずでした。基本的には作曲されたものや用意されたモチーフ、あるいはもしかしたらその場で生み出されたものかもしれないがフリーテンポやぐちゃぐちゃしたノイズ、フリーキーなものはほとんど見当たらず、全編がひとつの「曲」という感じである。最初から最後までをつらぬくリリシズムと緊張感、グルーヴ……などを聴くべきアルバムなのだろう(たとえばサックスのフリーキーな演奏部分も、こういう風に編集すると、即興というより事前にアレンジメントされているように聞こえる。それが悪いわけでは全くない)。すべての参加者がこのすばらしい音楽に貢献しているが、やはり全体さまざまな国で演奏された断片をまとめあげた人物の手腕がすごいと思う。リーダーのハルクヴィストの即興がアナーキーな方向性にいかないひとである、という点も本作の鍵になっている部分かと思う。ほかの作品を聴けばいろいろわかってくるだろう。日本チームには芳垣安洋、高良久美子も参加している。とくに高良久美子のパーカッション(マリンバ系)が全体として重要な役割を果たしているように思う。チェンバー・プログレのような要素もある。楽しいです。