shoji hano

「STILL CREATE」(KUKU LAVEL 810001)
SHOJI HANO(Dr.)KEIZO INOUE(A.Sax)DUO LIVE AT KUKU

 名古屋の「KUKU」という店でのライヴ録音らしい。1曲目、2曲目は羽野昌二と井上敬三のデュオ、3曲目はそこに柳川芳命のアルトが入る。4曲目は羽野とガイというギタリストのデュオ。「これがフリーJAZZの最終結論である」というコピーがライナーのなかの2箇所に強調されているが、もちろんそんなことはなく、古いタイプのフリージャズであり、そういうものを愛している我々にとっては、聴き所もたくさんある演奏だったが、やはり羽野昌二のドラムは私には今ひとつ合わない。井上敬三のアルトはすばらしく、ほかのアルバムで聴かれる演奏に比べても、楽器がでかい音で鳴りまくっていて、印象が変わるほどの存在感がある。私が、生で何度か聴いたときも、こんな音じゃなかったような記憶があり、たぶんこのライヴのときは絶好調だったのだろうと思うが、ひとりでやってる演奏ではないので、井上さんのソロだけを抽出して聴いても意味はない。2曲目の冒頭の13分以上におよぶ無伴奏ソロなど、メールスでのライヴ盤を彷彿とさせる緊張感にプラスしてリラックスした部分もあって、なんともいえない味わいがある。こういう演奏は人間が出る。本当に「即興」なのだなあとしみじみ思えるような、その場かぎりの空気の震えなのだ。循環呼吸もマルチフォニックスも特殊なタンギングもなく、ただ、普通にアルトを吹いているだけなのだが、これが染みるんですなー。そのあとは羽野昌二ドラムソロ。気持ちと気合いで持っていくようなソロだ。そのあとドラムとアルトクラリネット(?)のデュオになる。ここは互いに刺激しあい、新しいものを引きだそうとしていて、おもしろい。井上さんのクラリネットもこの日は絶好調のようだ。すげーな。このアルバムのなかでここが一番よかった。3曲目はセッションで、2本のアルトの痙攣しているような吹きあいではじまり、ドラムが暴れるという、いわゆるフリージャズのセッションの典型的なやつで、2アルトのがんばりもあってたいへん楽しいが、予定調和というか、フリージャズのクリシェを聴いているような気もちょっとするのでした。4曲目はギターとドラムのデュオで、内容はかなり面白くて、ギターは変態で、羽野昌二のドラムもいちばんいいレスポンスをしていると思うが、途中からぐちゃぐちゃになるのはいたしかたない。アルバムの統一感ということを考えると、ここに収録しなくてもよかったかもと思った。ともあれ、故井上敬三さんのすばらしい演奏を聴ける数少ないアルバムであり、貴重な記録だと思うし、その最高の演奏を引き出したのは羽野さんのドラムなのである。あと、タイトルがちょっと露骨な気がするんですけど。