jin harada

「HEARTS & MINDS」(DOUBTMUSIC DMS−154)
JIN HARADA

 これはぶっ飛びました。原田仁というひとがこんなわけのわからない、むちゃくちゃな、信じられない、アホなことをしているとは思わなかった。ベースもハーモニカもやらず、ボーカルのみの演奏で、「エフェクターを一切使用せずマイク一本で録音されたとは信じられないそのサウンド」と帯に書いてあるが、まさにそうであって、私にはどう聴いても電気掃除機の音にしか思えなかった。電気掃除機のブウォーン、キュウウン、ビュオオオンという音をマイクで拾って大きく拡声したのかと思ったら、これがひとの声だとは……。時々デスヴォイス的なものや、なにかをしゃべっているような声も混じるので、ああ、声なのだなとわかるが、ほかの部分はとにかくノイズで、これが「人間の肉声」だというのは驚きまくりである。これまでも即興やノイズで、ボーカルのひとがいろいろなパフォーマンスを繰り広げるのを見たり聴いたりしてきたが、こんなのははじめてだ。なぜ、こんなことをしているのか、しなければならないのか、それはさっぱりわからないのだが、とにかく感動した。帯には「鬼気迫るノイジー・デス・ヴォイス・ソロに心底驚いてください」と書いてあるのだが、この「鬼気迫る」というのは、私には、「こんなアホなことをとことん突き詰めて、芸術にまで昇華したこのひとの頭のなかを考えると鬼気迫る」という意味に思えた。ジャケットデザインも超秀逸でほぼ白一色。なぜか蚊が一匹いるのはデング熱へのオマージュか。内ジャケットはもっと凄くて、まったくの白のみ。もうめちゃくちゃ面白いのでぜひ多くのひとに聞いてもらいたい。私は、入手してから毎日聴いています。そして、爆笑しています。人間の声の、そして、人間の可能性は無限だなあ……。