slim harpo

「THE BEST OF SLIM HARPO」(HIP−O RECORDS HIPD−40072)
SLIM HARPO

スリム・ハーポは癖になるんです。ハーポといえばエクセロだが、かなりの数のヒット曲があるはずなので、ここに収められているのはそのうちのほんの一部である。つまり、全部がベスト中のベスト、名演佳曲ということになる。1曲目の「アイム・ア・キング・ビー」にはじまり、これも大ヒットの「ベイビー、スクラッチ・マイ・バック」で終わる。スリム・ハーポは「非常にゆるい」ということになっている。これはルイジアナブルース全体の特徴ということだそうだが(私はそのあたりはほとんど聴いたことはなくて、スリム・ハーポとライトニン・スリムぐらいしか知らん)、私は以前から、スリム・ハーポのどこがゆるいのかよくわからない。どっちかいうとタイトでキビキビしているようにさえ思う(「シェイク・ユア・ヒップ」とか)。アフタービートもきいてるし、かなりノリノリのジャンプナンバーとか、超有名な「レイニン・イン・マン・ハート」のようなR&B的な曲もあるし、けっこうエグいダミ声でのトーキングブルースみたいなやつ(「ブルーズ・ハンガバー(二日酔いのブルーズ)」とか)も2曲あるし、ジャイヴ的な歌詞の曲(「テ・ニ・ニー・ニ・ヌ」とか)もあるし、とにかくバラエティ豊かである。ただ、エグみはないのはまちがいない。個性はすごくあるのだが、それはスルメのように噛めば噛むほどしみじみでてくるタイプのものなので、そういうところをゆるいと表現しているのかもしれない。歌い方もシャウトするというより、力の抜けた感じで洒脱に歌をビートに乗せているが、これを言っているのか? ゆるいというより軽い感じの歌。でも、リズムはけっこうハードなのでそれとの対比でよけいにかっこよく聞こえるし、構えることなくリラックスして永遠に聴き続けていられる。あと、ハーモニカはたしかにゆるゆるでヨレててすごく楽しい。ハープをソロ楽器としてなにかを表現……みたいなことはなくて、ぷわー、ぷわー、と鳴っている。どの曲も楽しいし、かっこいいので、ほんとこのベスト盤には文句のつけようがないが、やはり一枚というのは物足りなくなるので、もうちょっと曲数の多いやつを聞きたいよなあ、と言いつつ、結局ずっとこればっかり聴いてる、というのが私のスリム・ハーポへの好きさ加減の限界なのだろう。そういう「ゆるさ」がハーポにはふさわしい気もするのである。