andrew hill

「LIFT EVERY VOICE」(BLUE NOTE RECORDS 7243 5 27546 2 5)
ANDREW HILL

 一曲目、めちゃめちゃかっこええ。何べんも何べんも何べんも聴いた。なんやねんこのコーラス。かっこええわー。ソウルっちゅうんですか? 時代の徒花といえばそうなのかもしれないが、さすがにアンドリュー・ヒルで、ただのソウルではなく、ひねってある。それもかなりいびつに。あまり「すげーっ」というような評価は聴いたことがないカルロス・ガーネットだが、このアルバムではその無骨さがぴったりあっていて、ほんとかっこいいのだ。わかるわかる、ガーネット……という感じで、つい応援してしまう。ウディ・ショウもめちゃめちゃ快調で、フロントのふたりを聴くだけでも価値がある。もちろんアンドリュー・ヒルのソロも、アレンジ同様、かなりひねったもので、かっこいい。私はこれまでアンドリュー・ヒルの良い聴き手ではなかったが、死去の報に接して、ちゃんと聴いてみる気になったのだ。すんませんでした。一曲めがあまりにかっこいいので、あとの曲は何度聴いても印象が薄いが、どれもなかなかのものであることを付け加えておきます。時代やのう。

「NEFERTITI」(EAST WIND UCCJ9035)
ANDREW HILL

 日本制作なのだが、そうは思えないほど(というのは失礼だが)クオリティの高い、すばらしい内容である。孤高のピアニスト、という言葉がぴったりするヒルの音楽は、日本制作とかそんなことは関係なく、歪められたり、ねじ曲げられたり、なにかを売り渡したりすることはなかったのである(こう書くと日本制作のジャズレコードが最低最悪のようだが、もちろんそんなことはない。でも、ひどいの、あるからなあ……)。だいたい私はピアノトリオとかを好んで自分から聴くことはないが、アンドリュー・ヒルが亡くなったのを機会として、何枚か聴いてみたなかの一枚なのであるが……うーん、「硬質」だ。そして、非常にシリアスだ。おそらく共演のリチャード・デイヴィスの音楽性のせいもあると思うが、コルトレーンやドルフィーの音楽に通じる、聴いていて背筋が伸びるような演奏。この「硬質」な感じは、最近のジャズではなかなか味わえない。フリージャズですら、娯楽性を前面に打ち出している昨今、こういうストイックな音楽は少数派である。「音楽って音を楽しむもんだろ」とか、したり顔でぬかすやつらがいるからな。でも、とにかく私はこういう音楽が好きなのだ。悪いか。でも……四曲めの、ラストが唐突に切れるのは、わざとなんだろうか。ちなみにアルバムタイトルの「ネフェルティティ」というのは、マイルスの曲ではなく、同名異曲でした。