dre hacebar

「COLLECTIVE EFFERVESCENE」(CLEAN FEED RECORDS CF360CD)
DRE HOCEVAR

 クリス・ピトシオコスのアルバムかと思っていたら、買ってから知ったのだが、なんとドラムがリーダーなのだった。リーダーはスロベニア人だそうで、ピアノはベルギー人だそうだ。ライナーの最初の部分にシュリッペンバッハのグローブ・ユニティの話が書かれているので参加していたのかなあと思ったが、どうもちがうらしい(未確認)。本作はほかにチェロとエレクトロニクスが参加したクインテットで、ピトシオコスの出番はそれほど多くはないが、やはり登場するとアルトからこちらの予想を超えた音を紡ぎ出してくれるので楽しい。チェロのひともセンスがよく、ハッとするような生々しい音を出してくれてすばらしい。全体としては、非常にオーソドックスなフリーインプロヴァイズドミュージックで、ライヴエレクトロニクスのひとが入っているものの、アコースティック指向。やや古臭いという言い方もできるし、伝統を踏まえたという言い方もできる。たぶん両方だろう。ピアノが場面転換に重要な役割を果たしており、ときとしてその場を支配する(やはりピアノというのはなかなかむずかしいですね)。全員、「よく心得てます」という感じで、ひとりだけ飛び出すやつもいない。もうちょっと個人の暴走を聞きたかったような気もするが、そういう瞬間はほぼ皆無なかわりに、全員による緻密な即興タペストリーが織り上げられていく過程を体感できる。何度も聴いているうちにじわじわはまっていくタイプの音楽で、ピトシオコスのいつもの「ギャーッ、ピー、ギョエーッ」というのとは対極にあるような気もする(そういう部分もあるのですが。たとえば6曲目の最後のところとか7曲目とか)。ぐっと抑えた、シリアスな表現の連続はしんどいけど心地よい。ちょっとした音色の変化とかダイナミクスとか、かなり微妙で、細かい部分に重点を置いた即興が行われているので、たぶん、聞き流すような聴き方ではまるで面白くないと思います。