「MUSIC FROM TWO BASSES」(ECM 1011ST)
DAVE HOLLAND/BARRE PHILLIPS
このアルバムを聴くときはいつも、約1時間、あらゆる束縛から心を解放し、夢幻の世界に遊ばせることができる。たった2本のウッドベースから作り出されているとはとうてい思えないすばらしい音楽。主人公であるふたりのベーシストの技術的熟練はもちろんだが、彼らの「なにかいいものを、あたらしいものを、すばらしいものを作ろう」という気持ちがうまくかみ合って、これだけの成果がうまれたにちがいない。二曲の長いフリーインプロヴィゼイションと、互いのコンポジションが、絶妙に入りまじり、まったく聞き飽きない。繰り返し言うが、たったふたりのベース弾きがこれだけの音世界を作りだしているのである。おそらくベースのデュオだけで1枚のアルバムを作るのは、ベースソロだけのアルバムよりもむずかしいにちがいない。それをこのふたりはやってのけた。バール・フィリップスについては、昔、コンサートの主催者側になったこともあり、思い入れもあるし、デイヴ・ホランドについては、最近のピアノレスでヴァイブを入れたクインテットのすばらしさにすっかり魅せられているわけだが、そのふたりのデュオ。なんともすごいことになってしまった。私にとって、毎日でも聞きたいような宝物のような1枚である。なお、ふたりが対等のアルバムだが、先に名前の出ているデイヴ・ホランドの項目に入れました。