「GROOVIN’ WITH JUG」(CAPITOL/PACIFIC JAZZ CDP7929302)
RICHARD HOLMS & GENE AMMONS
アモンズとオルガンというと、ブラザー・ジャック・マクダフとの「ミーツ・ボス」や、エディ・バスターを従えたあの傑作「イン・シカゴ」、スティットとの「ボス・テナーズ」チームにオルガンを入れた「ソウル・サミット」「ボス・テナー・イン・オービット」、クラレンス・アンダーソンとの「プリーチン」などが頭に浮かぶが、マクダフとのアルバムがおとなしく感じられるほど、本作はアモンズが吹きまくっており、絶好調である。最初の曲の冒頭部あたりは、ん? ちょっと調子悪い? 音圧がいまいちだし、音も裏返ったりしてる? と思ったりもしたが、いやいやいやいやとんでもない。聴き進むにつれて、本作におけるアモンズの凄みに慄然とした。がっつり弾きまくるグルーヴ・ホルムズもすばらしいし、ちょろっとでてくるギターのジーン・エドワーズのプレイも美味しいのだが、耳はどうしてもアモンズに引きつけられる。こういうオルガン入りだと、ファンキーな、ブロウに徹したホンカー的な演奏か、そういうのを無視してあくまでバップに徹するかだと思うが、アモンズは両方やってしまうのである。ある曲ではホンカー的フレーズの教科書のような熱血ブロウを徹頭徹尾展開するかと思えば、ある曲では泉が湧き出るがごときバップフレーズのオンパレードで、歌心を聞かせる。ブリルハートとは思えない独特の音色といい、フレーズの節回しといい、アモンズは本当にボスですな。いやー、満足満足。1曲目から5曲目まではブラック・オーキッドというロスのジャズクラブでのライヴ(プレスティッジじゃなくてパシフィックなのはシカゴじゃないからか)で、6〜8は同じ日の午後のスタジオ録音。つまり、昼間にスタジオで録音かたがた顔合わせをして、そのあとのライブだからバンドとしての一体感もばっちりだ。アモンズは復帰後も凄いよ、というひとがいるが、やはり演奏はかなり違う。違うというか、指が回らず、音もいまひとつだ。しかし、それは表面的なことで、もちろんアモンズの熱いブルース魂、テナー魂は健在ではあるが、やはりどうしても「ボス・イズ・バック」よりまえのこうしたアルバムに手を伸ばしてしまうが、本当はアモンズに関しては全部好きなのだ。アモンズというひとは、その顔の迫力や存在感、ジャズ界における位置などはもちろんのこと、そのフレーズのカクカクカクカクとした四角さ(わかるかなあ。8分音符のノリのことなのですが)が、六代目笑福亭松鶴とそっくりだと思うのだ。そして、倒れたあとの晩年の松鶴が呂律がまわらなくなり、ちゃんとしゃべれなくなったあとの松鶴の落語も大好きなのである。なんのことかわからんかもしれないが、私にとっては本当に、ジーン・アモンズと六代目はほとんどイコールに近いのである。傑作でした。