lynn hope

「LYNN HOPE WITH HIS TENOR SAX」(PATHE MARCONI 154 6661)
LYNN HOPE

 アホのリン・ホープ。頭にターバンを巻いて、テーブルのうえに飛び乗ったり、バーカウンターにのけぞったりして大ブロウを展開していたらしい。曲調も、本作を聴いてみればわかるが、ズンドコズンドコしたC調なリズムや、あまりにチープなアレンジが、ユーモアを念頭に作られた音楽ではないのに、なぜか笑える。一種の「天然・冗談音楽」といえる。こういうことが自然にできる、というのはアホとした言いようはなく、ひとつの才能である。しかし、なかには(本作にも収録されている)「サマータイム」のように、どろどろのブラックなパワーを叩きつけるがごとき壮絶なマイナー曲もあり、リン・ホープの底力を感じることもある(ビッグ・ジェイの「ハーレム・ノクターン」に匹敵するような血の涙の大ブロウなのだ)。しかし、やはり彼の本領は、ズンドコズンドコした脳天気な演奏におけるホンクにあると思うがどうか。まさに、生活の糧。ストレス溢れる現代には、こういった音楽が必要なのだ。