earl howard

「5 SAXOPHONE SOLOS」(MUTABLE MUSIC MUTABLE17521−2)
EARL HOWARD

 シンセサイザー奏者、ライヴエレクトロニクス、テープ奏者として有名なひとらしいが、サックスは余技ということか? 本作は5つのソロサックス(アルト)が収められている。見かけは、頭が禿げていて、真っ白なひげを仙人のように垂らした顔立ちだが、まださほどの年齢ではない。演奏を聴いてみると、なんというか、すべての音域をサブトーンで吹いているような感じである。音の説得力はないが、楽器と戯れているような感じ。ジャズとかビバップ的なものを経過せず、吹奏楽部で吹いていたひとがいきなりソロサックスというのをやってみた、というような新鮮さがある。しかし、表現したいことはちゃんと持っているようで、非常に楽しく聴けた。ジュセッピ・ローガンとまではいわないが、いわゆるヘタウマ的な部分も感じられるが、低音から高音までちゃんと均等に鳴らしているので、おそらくわざとだろう。奏法にはクラシック的な要素も感じる。想像だが、すごく狭いマウスピースを使っているのではないだろうか。リー・コニッツみたいな雰囲気もある。ほんとうに、リコーダーかなにかを遊びで吹いているみたいな微笑ましさ、稚気も伝わってくる。最後の曲は21分もあるのだが、吹いているうちに自然発生的にでてきたフレーズを逃さずうまくつかまえて盛り上げていくあたりや、つぎつぎと場面を転換していくあたりは、まさにフリーインプロヴィゼイションの肝をわかってらっしゃるー、と思った。これだけの長丁場を、アルト一本で真摯にドラマをつむいでいくことは、よほどの奏者でなければできないことだからである。全体にかかっているエコーは、この演奏がニューヨークのペインティングスタジオで録音されたせいかもしれない。かなり興味深く新鮮な演奏でした。みんな、ノア・ハワードとまちがえないようにね(大きなお世話)。