helen humes

「HELEN HUMES AND THE MUSE ALL STARS」(MUSE RECORDS MR 5217)
HELEN HUMES AND THE MUSE ALL STARS

 ミューズ・オール・スターズといえば例のサンディーズでのライヴシリーズだが、本作はその約一年後のスタジオ録音。ピアノがレイ・ブライアントからジェラルド・ウィギンズに、ベースがジョージ・デュビビエから(4曲だけ)ライル・アトキンソンというひとに、ドラムがアラン・ドウソンからロニー・コールというひとにかわっているが、それでも豪華である。1曲目はルイ・ジョーダンでおなじみの「アイム・ゴナ・ムーヴ・トゥ・ザ・アウトスカーツ・オブ・タウン」(クリーンヘッドも吹き込んでる)だが、冒頭いきなり出てきてイントロを吹くのは右チャンネルのコブで、まずはクリーンヘッドが歌いはじめ、バディ・テイトが珍しくバリトンサックスでオブリガードを入れる。ヘレン・ヒュームズもすぐに登場し、クリーンヘッドと掛け合いで歌う。オブリガードもコブとテイトが交互に入れるという豪華絢爛な陣容。ボーカル二人もめちゃくちゃかっこよくて、野太いクリーンヘッドの声と年齢をまったく感じさせないキュートなヒュームズの声の対比もいいが、なんといってもコブのソロがすばらしい。クリーンヘッドのボーカルが聞けるのはこの曲のみ。2曲目はバラード「ジーズ・フーリッシュ・シングス」でテイトはテナーで参加(コブは不参加)。ピアノソロも最高です。3曲目は「ウォウ・ウィズ・ミー」という、子どもの歌みたいな軽快で楽しい曲である(ライナーには「西インド諸島の曲」とあるが?)。クリーンヘッドの、ボーカル同様(?)かなり上ずったアルトソロが間奏をとる。4曲目もバラードで「アイヴ・ガット・ア・クラッシュ・オン・ユー」という曲。こういうせつせつとした曲もヒュームズは上手い。コブが間奏を吹く。最後はヒュームズががんがん盛り上げる。さすがの貫禄である。B面にいって、1曲目は「ボディ・アンド・ソウル」。なんというか、この手垢のついたスタンダードをヒュームズは軽々と、感情過多にならずに歌い上げる。ホーンは入っていない。2曲目もバラードで「マイ・オールド・フレーム」。これは「ボディ・アンド・ソウル」に比べるとぐっと熱のこもった深みのある歌い方で、どちらもできるのがヒュームズの良さだろう。バディ・テイトは最初にちらっと吹くだけで、あとは一切オブリガードはしていないが、間奏ですばらしいサブトーンによるソロをする。この曲が本作の白眉かも。ラストはヘレン・ヒュームズのオリジナルでミディアムのブルース。目いっぱい声を張りまくるヒュームズはいわゆるブルースシンガーとはやはり違っていて、ジャズっぽい。間奏はコブがグロウルしまくりのブロウを展開して盛り上げ、つづいてクリーンヘッドがアルトでけっこうヨレヨレのソロをする(これもひとつの味であります)。そして、バディ・テイトがサブトーンで最後を見事に締めくくる。三人のホーンそれぞれの違いがはっきり出ていて、すばらしい。ヒュームズが再度登場し、歌の途中で何度も何度もブレイクするのだが、筆舌に尽くしがたいほどかっこいい。ジェラルド・ウィルキンスが心得た感じのバッキングも大きく寄与している。最後に異様な高揚を見せてアルバムは終了。傑作です!