「IKEZAWA RYUSAKU」(ミミノコプロ MP008)
IKEZAWA RYUSAKU
買ったとき、毎日ずっと聴いてたのだが、今年になって久しぶりに取り出して聴いてみると、またはまった。これが誉め言葉になっているかどうかわからないのだが、ドラマーであるこのひとが、ドラム・パーカッションをベースにしてピアノその他を多重録音した「ソロ」アルバムだと思うが、そういう作り方なのに、多重録音とは思えず、複数のミュージシャンによるいきいきとしたやりとりに聞こえる点が、まずすごい。これはたぶん、計算ももちろんあるだろうが、直感的な部分が大きいのではないか。全部ひとりでやる、ということになんの意味があるのだろう、と思うひともいるかもしれないが、いや、ある。このアルバムを聴くと、ミュージシャンは一度はこうやって全部ひとりで作りあげるという作業をしたほうがいいのではないか、と大きなお世話的なことを思ったりする。それほど楽しく、ステキな世界観ができあがっている。1曲目はピアノとドラムによる、セシル・テイラー的あるいは山下トリオ的なハードなフリージャズ、2曲目はハピドラムというんですか、音階の出るパーカッションによる美しい即興、3曲目はピアノとハーモニカによる暖かく美しい世界、4曲目はギターみたいな弦楽器のコード弾きとノイズっぽい音の共演(途中で世界が一転する展開に)、5曲目はストイックなドラムソロインプロヴィゼイション、6曲目はキーボードによるミニマムミュージック的なチープで不思議なサウンド(最後はチープな「未知との遭遇」みたいになるが、それがたまらん)……とバリエーションが豊富すぎる。それなのに、ごちゃまぜというかバラバラな感じにならず統一感があるのは、すべてひとりでやっていることと、おもちゃ箱をぶちまけたみたいな愉しさにあふれているからだろう。いやー、どの曲もほんと楽しいんですねー。林栄一バンドでハードなドラミングを聴かせてくれているこのひとに、こんな顔があろうとは。おもろいなあ、音楽家という職業は。なお、裏ジャケットにある「エレクトリック大正琴&ギター」が5曲目とあるのは、たぶん4曲目の誤り。