「ROSTBESTANDIGE ZEIT」(DOUBT MUSIC DMF−132/133)
INO IMAI AXEL NORI
聞く前はこんなタイプの演奏だとはじつはまったく思っていなかったのですよ。もっと、先鋭的で、実験的で、ノイジーで、シリアスなフリーインプロヴァイズド系の演奏だと思っていた。それで二枚組はちょっとしんどいなあ、とすら思っていたのだが、聴いてびっくり。めちゃめちゃおもろいやん! これは極楽的ハッピーミュージックだ。誤解を承知でいうと、たとえばゴンチチの演奏を聴いているときのような楽しさ、愉快さ、心地よさがこのアルバムにはいっぱい詰まっている。いやー、メンバーやジャケットからは想像つきませんでした。たしかにフリーミュージックなのだが、なぜかスウィング感があり、音と音のあいだがスカスカで、聴いているとなーんにも考えなくてもいいようなわくわくした気分になってくる。醸し出される即興の音の数々に身をまかせているだけで、あー、もうほかにはなんにもいらん、という至高の状態になる。これはスバラシーッ! なぜ、こんなことになっているのかは、じつはさっぱりわからん。おんなじようなタイプの演奏は星の数ほども転がっているが、こういった楽しみかたはなかなかできるものではない。おそらく個々のミュージシャンのキャリアとか腕とか相性とか……そういったものが奇跡的にうまく合致したんだろうなあ、としかいえない。1枚目の純粋即興パートも、2枚目のアレックスのコンポジションパートも、じつはさほどのちがいはなく、基本的には同じように鑑賞できる。メンバーも微妙にちがうが、コンセプトがいっしょなのでずっと通して聴いてもまったく違和感はない。ふつうなら二枚組を通して聴くなんてたいへんだが、本作に限ってはまるで苦にならず、逆に楽しい時間がいつまでも続く。これは、2009年の個人的ベストアルバムかもしれないなあ……もう2010年だけど。シンプルなジャケットデザインも悪くないです。なお、限定おまけでついてきた井野〜アレックスデュオによるモンクナンバー1曲がはいったCD「リフレクションズ」は、これはまさに「モンク」そのものであって、なんの仕掛けも奇をてらう部分も企みもない、純粋なモンクの世界でした。なお、だれがリーダーなのかわからないが、最初に名前の出ている井野信義の項に入れた。