misaki ishiwata

「SMOG BRASS」(BAKAMO RECORDS BKM−011)
SMOG BRASS

 まず、バンド名がかっこいい。石渡岬(いしわたみさき、と読むらしい)さんのリーダー作でブラスアンサンブル。ブラスロックというのが一番的を得た表現だろうか。石渡さんは中京をベースに活動してトランぺッターで、私はなんやかんやで4回ぐらいライヴを見せていただいたが、先日の渋さチビずのときの物販で本作を購入したのだ。7人編成とは思えないぐらい分厚くファンキーなブラスアンサンブル。基本的にはトランペット、トロンボーン、テナー、バリトンの4管に、ドラム、ギター、チューバのリズムセクションという編成。めちゃくちゃかっこいい。「愛の道すがら」という曲(いつまでも頭のなかでテーマが延々めぐりにめぐる)はどう聞いても昭和歌謡。デンマークのNicolas Field(ds) とGregor Vidic(sax)がビッグアップルに来たとき(客は私ひとりでした)、たまたまこのアルバムがかかっていて、「おお、シブサシラズのトランペットか!」とふたりとも絶賛していたのを覚えている。ファンクでジャズでブルースでロックでブラスバンドでクラシックでムードミュージックでフリーで……という面白さがぎゅーっと詰まったアルバムなのだが、アンサンブルとソロの対比が絶妙で、みんな上手いよなあ。ソロが全部いきいきとしている。曲もアレンジもいいが、なによりパワフルだ。かっこいいリフさえあれば無敵だ。このアルバムはそのあたりを徹底的に追及していて、すがすがしい。いくつものリフを組み合わせてドラマチックにしたててある。どの曲もノリがよく、へらへらと聞くこともできるが、じつは細部まで丁寧に作り込まれた作品なので、じっくりゆっくりじわじわ聴くべきだと思う。でも、全曲石渡さんの作曲となっているが、「パンを踏んだ娘」はさすがにちがうのでは?(思わずネットで作曲者を調べてしまった)。 とにかくめちゃくちゃ気持ちいいサウンドなので、ニューオリンズブラスやブラスロック、渋さ知らズ……などが好きなひとはもちろんだが、吹奏楽をやってる中高生も、こういうのを聴いたらええんちゃうかと思います。最少の人数で最大の効果。ボーカルもいい。傑作。大推薦。