itchy fingers

「QUARK」(VIRGIN RECORDS V2438)
ITCHY FINGERS

 これはなあ……たしかにかっこいいし、めちゃめちゃうまいし、ある種の爽快感も、「すごい音楽を聴いた」という満足感も味わえる、凄まじい技術力と凄まじい音楽性が合体した演奏だといえるが、今の私にはけっこう縁遠いタイプの音楽だ。たぶん20年以上まえに買ったのだと思うが、当時はフリー系ならワールド・サクソホン・カルテットやローヴァ・サクソホン・カルテット、個性派ならオデオン・ポープのサックス・クアイアなどなど、正統派ならボビー・ワトスンの29丁目サックスカルテットなど、さまざまなサックスアンサンブルが流行っていて、本作もそういった流れのなかで試聴したと思うが、超絶技巧とフュージョンにまで食い込んだモダンな音楽性、ポップさ、個々のサックス奏者のクオリティの高さなどがこのイッチー・フィンガーズは群を抜いていた。本作は、マッコイ・タイナーがゲストである点も含めて、かなりキャッチーな話題もあり、みんなが買っていたような記憶がある。聞き返してみると、たしかにめちゃめちゃかっこいいし、めちゃめちゃうまいし、めちゃめちゃダンサブルで、めちゃめちゃモーダルで、めちゃめちゃブレッカーである。でもなあ……かっこええなあとは今でも思うのだが、積極的に聴きたいとは思わない。そういう音楽である。でも、中高のブラバンとかでサックスをやっている若人に聴かせたら、思わずのけぞって感動するのではないか、と思う。そんな演奏である。