「SCHOOL WORKS」(MONS RECORDS CD1900)
ETHAN IVERSON
今はバッド・プラスで有名になったリーダーのイーサン・アイヴァーソン(と読むんじゃないと思うがわからん)というピアニストはこの録音時、まだ若干20歳だそうで、ライナーの作者によると16歳ぐらいからばりばりやっていた、とのこと。ベースとドラムはドイツ出身で、これも若い。このトリオはワーキングバンドで、録音用に組んだバンドではない。そこに、超大物かつ超年配のデューイ・レッドマンが加わったスペシャルカルテットなのだ。たぶん自主レーベルに近いレーベルだと思う。ほとんどがリーダーのオリジナルで、あとはスタンダードやオーネット・コールマンの曲(表題曲)、ハービー・ニコルズの曲……などを演奏している意欲作。じつに自由で、たとえスタンダードを演ってもブルースを演っても、どこかしら突き抜けた、のんびりした自由さがあり、どこへ行くのかわからないような飄々とした風情があって、それがまたゲストのデューイの芸風とも共通しており、作品として成功している。そうなのだ、デューイ・レッドマンというひとは、初期の頃は声を出して吹いたり、ごりごり吹いたりしていたが、しだいに「普通」に吹くようになり、しかも、なににもとらわれず、感じたままに吹く……いう真の自由さを勝ち得たような気がする(だからこそキース・ジャレットとも演奏できたのだろうが)。ビッグトーンで朗々と吹く、とか、フラジオでぎゃーぎゃースクリームするとか、そういったものとはほど遠い、洒脱で、なおかつ自由な演奏。それが、このアルバムではよくわかる。たとえばドラムとデュオになるところでは、たとえばデヴィッド・マレイなんかだとゴリゴリ吹きまくるところだが、デューイは本当に美しく、しかも好き勝手に吹く。いやー、参りました。また、パーカーのブルースなんかでも、ふつうのビバップのソロのようで、ビバップでない、フリーのようでフリーでない、デューイ節としかいいようのないフレーズを積み重ねていき、それがまるで奇をてらった感じに聞こえない。しかも、ピアノソロもよく聴くと、それを受け継ぐかのようなフレージングで、本当にこの組み合わせは正解だったなあ、と感心。リーダーはピアノだが、デューイ・レッドマンの隠れた名盤かもしれない。また、アイヴァーソンにとっても、20歳のときのこの表現力(たとえばオーネットの「スクール・ワーク」でのソロなど)はすばらしいと思う。