「RAW MATERIALS」(SAVOY JAZZ SVY17603)
VIJAY IYER & RUDRESH MAHANTHAPPA
なにげなく2曲ほど聴いていて、ハッと思った。(そうか、これ、デュオなんだ……)まったく気づかないほど、ごく普通にカルテットぐらいの編成のように思えるほど、このふたりのコラボレーションは緊密かつリズミカルで、ほかのものの付けいる余地はないぐらいだ。マハンサッパの、テナーのように太くて、鳴りまくっているアルトは、モーダルなフレーズを中心に歌いまくり、その表現は独特の美意識に基づいていて、ときにエキゾチックである。テクニックは抜群で、しかも饒舌なので、聴いているとお腹一杯になってくるが、それでもまだ吹き続けるのがマハンサッパである。ヴィージェイ・アイヤーも(ざっくりした言い方だが)良く似たタイプなのかもしれない。手数が多く、どんなスタイルでもこなせ、なんでもできるが、その表現は個性的である。このふたりが出会うと、まるで双子のように以心伝心、音のキャッチボールを行い、だんだんその投球の間が短くなっていき、まるでひとりの人間がサックスも吹きピアノも弾いているのでは、と思えるほどにどんどん盛り上がっていく。うーん、これならベースもドラムもいらんなあ。どの曲も、コンポジションがすばらしいうえに、演奏が濃密で、じっくり聴いていると4曲ぐらいでしんどくなってくるぐらい、内容がぎっしり詰まっている。3回ぐらいに分けて聴くほうが集中力が途切れないと思う。でも、マハンサッパのアルトは、アルト嫌いの私が言うのもなんだが、いくら聴いても快感なぐらいに音がすばらしいので、もっと吹いてくれっ、という気にもなる。これだけアルトを鳴らせるひとがほかにいるのかとさえ思う。さっきも書いたようにかなり饒舌だが、この饒舌さは彼の音楽性と表裏を成しているので、これはしかたない(というか長所である)。そして、そのアルトを最大限に引き立てているのがアイヤーのピアノで、これ以上はのぞめないぐらい、ほぼパーフェクトな組み合わせのデュオだと思う。