「SEEING YOU SEE」(CLEAN FEED CF176CD)
KEEFE JACKSON QUARTET
シカゴあたりのメンツで、ジェブ・ビショップが参加、ドラムが日本人(このひとはレスポンスにもオリジナリティがあり、すごくいいと思った)、そして、リーダーがテナー&バスクラの知らないひと、ディスクユニオンのポップでも絶賛……とここまで条件がそろうと、聴いてみたくなるのは人情。というわけで、聴いたのだが、ジェブ・ビショップはあいかわらずすばらしい。まあ、ちょっと嫌味にうますぎるぐらいにすばらしい。しかし、リーダーのテナーのキーフ・ジャクソンというひとがいまいち私にはピンとこなかった。なんでやろ。あんまりストレートアヘッドな表現をしないひとで、いろいろ考えて理知的なフレーズをこねくりまわす。そのあたりがたぶんハートにドーンとこなかったのだろう。ジェブ・ビショップが、具体的なアイデアを明確に提示したソロをするので、それとの対比で、アブストラクトなテナーソロがパワー不足に感じてしまうのかもしれない。でも、全曲リーダーのオリジナルで、なかなかの意欲作のようなので、三回聞きなおしてみたが、やはり印象は変わらない。フリーっぽいところもあるのだが、全体にサウンドがハードバップ的なところも私の好みではないのかも。もうしばらくしてから、もう一度聞きなおしてみよう。
「A ROUND GOAL」(DELMARK RECORDS DE5009)
KEEFE JACKSON’S LIKELY SO
キーフェ・ジャクソン(と読むのか)というひとは私にとってはけっこう謎のテナー吹きなのだが、だいぶまえにクリーンフィードのアルバムを聴いたときは「ピンと来なかった」と書いている(上記参照)。そのあと、YOUTUBEなどで最近の演奏をたまに聴いたりして、ふーん、こういうことやってるのかあ、と思っていたら、知らないあいだにこんなアルバムが出ていた。この「ライクリー・ソー」というのは彼がリーダーで、シカゴ界隈(?)のサックス〜クラリネット奏者ばかりを集めた木管楽器アンサンブルなのだが、なんとマーズ・ウィリアムズ参加ときいて、あわてて購入。あいかわらずジャケットは、くいだおれ人形のような眼鏡をかけた兄ちゃんがくいだおれ人形のような服を来てテナーを吹いており、いまいちそそられないが、デイヴ・レンピスも入っているし、コントラバスサックス奏者、バスサックス奏者もいて期待は高まるばかり。しかし、聴いてみると、かなりかっちりした木管アンサンブルもので、あれ?という感じ。ときどき、ジャクソンのソロトラックやレンピスのソロトラックが挟まっていたりして、そこは面白いがその面白さは「いつもの」やつだ。アンサンブルのほうはどうか。いや、なかなかいいと思います。興味深いコンポジションもある。そこに乗るそれぞれのソロも個性的で秀逸だ。でも、コンポジションとソロの距離がちょっと離れているかも。あと、これだけむちゃくちゃな木管楽器の群れ(あえて群れと言わせて)をどどーんと集めたわりには、狂気とか暴走がなく、ほんとうにちゃんとした木管アンサンブルの範囲内にとどまっているのがなんともモッタイナイ。でも、それは無い物ねだりで、聴き所は満載なのだ。たとえば、タイトル曲のマーズのぶっ飛んだアルトソロとそれに続くバリサクソロ(レンピスか? バックで奏でられるリフのリズムをわざと無視した、コールタールを吐き出すようなえげつなさがかっこよすぎる)などはすばらしい。結局はソロの魅力かい、と言われるかもしれないが、それを引き出す構築の部分でキーフェ・ジャクソンの着想と構成が光っているということですね(全曲、彼の曲らしい)。ただし、ジャクソンのソロは、音色が固くて、いまひとつぴんとこなかったのは前に聴いたやつと同じ印象。