「STRETCHIN’ OUT」(PACIFFIC JAZZ TOCJ−50185)
THE JAZZ CRUSADERS
オリジナルメンバーにジョー・パス(3曲だけ)、モンク・モンゴメリーなどが加わった編成。ジャズ・クルセイダーズとクルセイダーズは別物である、と考えることもできるが、こうして聴くとやはり地続きなのだ。当たり前だが、ゴージャスなR&Bシンガーのボーカルをフィーチュアして売れまくっていたメロウでキャッチーなフュージョンと、硬派なテキサスの武骨なファンキージャズとの差は大きいが、それは結果だけを見るとそう感じるが、やはり底に流れるテキサスR&B魂には揺らぎがない。それと(いい意味での)コマーシャリズムというか、売れようという気持ちも十分感じられて、曲の選択や演奏の寸法なども含めて、一発当てたいという心意気も感じられる。それは芸術的な中身とは両立する、と私は思っているのです。1曲目のいかにもウィルトン・フェルダーっぽいブルース(音使いがひねってあるのでテーマはブルースっぽくないが、ソロに入るとドブルースになるのもいい)から、二曲目はテキサステナーの先達ジャケーのヒット曲「ロビンズ・ネスト」(たしかサー・チャールズ・トンプソンの曲)、3曲目はウェイン・ヘンダーソンの柔らかな音色のトロンボーンをフィーチュアしたバラード、4曲目は(モンク・モンゴメリーの弟である)ウエス・モンゴメリーの曲をモードジャズ的に解釈した硬派な演奏だが、とくにウイルトン・フェルダーのゴリゴリのソロは余計なことを考えずにストレートにアイデアをパワフルに展開するすばらしい演奏。5曲目は「バチャフィーリン」という邦題になっているが、普通は「バッカ・フィーリン」と言っているサドメルの「ヴィレッジ・ヴァンガード」に入ってるガーネット・ブラウンの(ビッグバンド好きには)おなじみの曲だ。この曲をなぜジャズ・クルセイダーズが演奏したのかはわからないが、ええ曲である。6曲目はいかにもサンプルの曲っぽくて、来たるべきクルセイダーズ時代を予感させる。本人のピアノソロもすばらしい。7曲目はうってかわって、ウェイン・ヘンダーソンとジョー・パスのデュオを中心とした純粋なジャズバラードでヘンダーソンのラストのカデンツァも含めてめちゃくちゃかっこいい。最後の8曲目はまさに「ジャズロック」という言葉がふさわしいような8ビートのファンキーナンバーで、フェルダーのテナーをフィーチュアした短い演奏。
それにしてもこのグループを聴くと、「こういうことがあるんやなあ」と思わざるをえない。つまり、高校時代の友達同士でアマチュアバンドを結成したら、それがどんどん有名になり、個々のメンバーもそれぞれその楽器においてビッグになり、とうとうスーパーバンドになった……ということだ。メンバーのひとりが突出して有名になって……ということはあるだろうが、こんな風に全員がその楽器においてすぐれた奏者になり、バンドとしてもめちゃくちゃ売れていく……というのはすごくないですかね。でも、サザンオールスターズとかもそんなところあるかも。つまり、個々の技量の集まりであるジャズに比べて「バンド」というのがいかにすごいことを生み出すか、ということなのかもだが、ジャズ・クルセイダーズはジャズにおけるそういうはしりなのかもしれない。なお、ヘンダーソンは「ロビンズ・ネスト」と「ポルカ・ドッツ……」でユーフォニアムを吹いている。