「PRIMITIVE」(RELATIVE PITCH RECORDS RPRSS019)
KYLE JESSEN
どこにもこのカイル・イエッセンというひとがなんの楽器を演奏しているのか、が書かれていない(アルトなんですけど)。ライナーもなにもなく、ただ曲名とスタッフの名前が書かれているだけである。しかし、ディスクユニオンのオンラインショップには「(本作は)イエッセンの怒りと孤独から生まれた。時に激しく叫び、時にゆっくりと突き刺さる生々しいソロ・サックス作品」となっていたから購入したのだ。内容はたしかにずっとグロウルしていて、ノイジーであり、かなり過激で過剰である。ときにあのマーティン・エスカランテを思わせるほどである。とくに際立ったテクニックを見せるとか、そういうことはなく、タイトル通りのプリミティヴな吹き方でずっと通している。もしかするとあえてテクニックを捨て、プリミティヴに徹しようとしているのかもしれない。正直同じような演奏が続くが、そこに大量の感情が込められているため、聞き飽きるようなことはない。それが「怒りと孤独」なのかどうかはわからないが、たしかに聴き手の心を揺さぶるものがある。聴いていて、こんなことは多くの先人がすでにやっている、とか、アナーキーとは言えずどちらかというとまとまっている、とか、こうしてCDにするとどうしても「まとまり」が感じられてしまう、とか、単調ではないか、とか……いろいろなことを思うが、それを突き破るだけの才能があるのではないか、という期待もある(5曲目などは、ただただ怒っているというより、ハーモニクスなどを使った叙情的な構成力を強く感じる)。本作はどうやら初のフルアルバムだそうなので、今後も注目したい。ネットで検索すると、このひとは外観もめちゃくちゃ貫禄があり、演奏もそれに負けていない感じであります。サックスのハーモニクスを「当てる」のがまだ百発百中とまではいってないようだが、そういう初々しさも決してマイナスの要因になっていない。