rudolph johnson

「THE SECOND COMING」(BLACK JAZZ RECORDS pCD−5281)
RUDOLPH JOHNSON

 はじめて聴いたときはほんとうにぶっとんだなあ。それ以来、聴きかえすたびにぶっ飛んでいる。P−VINEから日本盤が出たときにすぐに買って、もう、目が点になった。こんなすごいひとをどうしてわしゃ今まで知らんかったんかと、そのことに驚いた。というか、これまでどんなジャズの本にも「ルドルフ・ジョンソンつーテナー吹きがいて、グロスマンよりもリーブマンよりもすげーっす」と、どうして書いていないのか。それが不思議だし、この凄すぎるテナーマンが、ジャズ界のトップに立つことなく無名で消えていったことにも驚くしかない。ブラック・ジャズがP−VINEで復刻されたとき、最初にこのアルバムを聴き、仰天し、失禁しそうになり、味をしめて、ほかのやつもだいたい聴いたが、このアルバムを超えるものはなかった。いやー、正直、あらゆるジャズのアルバムを俯瞰しても、このアルバムを超える衝撃はないんじゃないか。それぐらい私好みのテナーであり、サウンドなのだ。たった二枚しかリーダー作がないことも信じられない。どうしてエルヴィン・ジョーンズ・ジャズ・マシーンに入らなかったのかなあ。とにかく、音色がまず凄い。黒々とした、やや濁った、太い音で、高音から低音まで存在感のある音色だ。フリークトーンもめちゃかっこいいし、音を割ったような感じのハーモニクスも「叫び」を感じさせて最高。そして、コルトレーン的なメカニカルなフレージングをあくまで生々しいパッションとともに吹ききるそのド迫力。なめらかで流暢な部分と無骨でドスのきいた部分が同居する個性。なによりもブラックミュージックとしての情熱とグルーヴが心を打つ。曲もめちゃかっこいいので、作曲力もあるひとだ。メンバーでは、ピアノのカーク・ライトシーが有名人だが(たしかにすごくいい)、ドラマーのダグラス・サイズというひとがめちゃめちゃ凄くて、ジョンソンの激烈なブロウを煽って煽って煽りまくる。ひーっ、最高。全曲すばらしくて、聴きだしたらあっという間。買ってすぐにみんなにすすめまくったが、なぜか反応はあまりなかった。でも、わしゃこのアルバムを永遠に聴きまくり続けるぞ。とにかく、いろんな意味で私好みのテナーであり、アルバムなのであります。本作があまりに良かったので、もちろん初リーダー作の「スプリング・レイン」も聴いたし、ジミー・マグリフのバンドで吹いてるやつとか、チェスター・トンプソンのアルバムも聴いたが、とにかく本作が一番凄い。オルガンバンドで吹いてるやつは、オルガンジャズ寄りのわかりやすいフレージングになっているのだが、それでもたしかにテナーの音色はルドルフ・ジョンソン特有のものだし、リズムもいいから、十分楽しめるのだが、なんといっても本作を最初に聴いてしまったので、物足らないのはしかたがない。

「SPRING RAIN」(BLACK JAZZ RECORDS BJ/4)
RUDOLPH JOHNSON

「ザ・セカンド・カミング」という大傑作を放ったルドルフ・ジョンソンの第一作目。1曲目の「シルヴィア・アン(うちにあるCDでは「シルヴィア」という表記になっている)」は速いブルースだが、とにかくめちゃくちゃかっこいい。ジョンソンはドスの利いた低音から濁りを帯びた高音など、音色もすばらしいし、フレーズも独創的で斬新でモダンで、完全に私の好みなのである。テクニックもすごくて、あまりに圧倒的な演奏だが、もしライヴならこのままどんどん盛り上がっていくのだろうと思えるような感じなので、5分という演奏時間がなんとも惜しい。この1枚目は2枚目に比べても1曲が短く、やや物足りなさもある。ライヴ盤を残してほしかったなあ。2曲目「フォンダ」はモーダルなボサノバ風だが、ジョンソンのテナーは我が道を行くすばらしいフレーズを積み重ね、最高である。軽い感じの曲調なのにルドルフのテナーは重量級だ。3曲目「ディスワ」という曲は、バウンスするファンクなリズムの曲で、そうそう、こういうのをやってもジョンソンは上手いのだ。今の耳で聴くと、こういうタイプの演奏は古臭く、ダサく感じられることが多いが(それはまたそれで味わい深いのだが)、そんなこと全然ないですね。4曲目「ミスター・T・J」というのはゆったりした4ビートの曲だが、ここでもジョンソンは激しいブロウを繰り広げて存在感を示しまくる。5曲目「リトル・ダフネ」もボサノバで、軽い曲調だが、ジョンソンのプレイはゴリゴリで、オリジナリティあふれるかっこよさ。ピアノソロもいい感じ。このかわいらしい曲のエンディングでこんな吹き方をするというのは、もうさすがとしか言いようがない(どんな吹き方かは実際に聴いてみてね)。6曲目「デヴォン・ジーン」もファンキーなR&Bっぽいブルースで、こういう曲をやっても、たとえばキング・カーティスなんかよりもずっとコルトレーン的なジャズっぽさがある。ソロのラストで「フィーッ」とホイッスルみたいなものを吹くのはカークを連想させる。ラストはタイトル曲の「4月の雨」で、バラードっぽくはじまるが、ソロに入るとミディアムテンポの4ビートになり、結局はジョンソンはゴリゴリ吹くのだった。ピアノソロとベースソロもいい。エンディングも秀逸。全体に、ドラムのレイ・パウンズもいい感じ。全曲ジョンソンのオリジナルだと思われるが、そういう才能もあるひとだった。どうしてもっとメジャーにならなかったのかさっぱりわからないスゲーテナー奏者だと思う。2作目のほうがジョンソンのプレイもエグ味を増していて、一曲の時間も長いのでたっぷりと吹いているため、説得力が増しているが、本作もすばらしいし、リーダー作の少ない(というか参加作自体が少ない)ルドルフ・ジョンソンの貴重なアルバムということを考えると、愛聴せざるをえない。傑作!