「DARK WAS THE NIGHT」(COLUMBIA/LEGACY CK65516)
BLIND WILLIE JOHNSON
あんまりブルース周辺のことを知らないので、ブラインド・ウィリー・ジョンソンを聴くのもこのアルバムがはじめてだったが……めっちゃええやん。かっこよすぎて失禁しそう。てっきりブルースのひとだと思っていたら、いわゆるエヴァンジュリストというやつで、キリスト教の伝道師的な存在なのである。その点、サン・ハウスとも共通していて、レパートリーもかぶっている。たとえばサン・ハウスで有名な「預言者ヨハネ(ジョン・ザ・リベレイター)」も演奏しているが、メロディ自体がだいぶ違う。ブラインド・ウィリー・ジョンソンは、ギター奏者としての腕が卓越していて、聞いていると、伴奏、リズム、メロディラインなどどれをとってもすごくて、微妙な震えなどを使った精妙な表現やボコボコとギターの胴を叩くパーカッシヴな表現には黙るしかなく、ああギターというのはこう弾くものなのだなあ……と思ったりするほどだが、やはりギターよりも声の迫力のほうが耳に飛び込んでくる。いやあ、こんな声で街角で説教されたら、それこそ悪魔の音楽って思ってしまいそうだ。ハウリンウルフみたいなモーンのある曲も、心臓を鷲掴みにされる。ウィリー・ハリスというひとが(ちゃんとした)ボーカルをとっている曲も数曲あるのだが、基本的には全部同じ。めちゃめちゃ凄いギターの伴奏と自身のえぐいボーカルについては、ブルース以上にブルースを感じさせる。たしかにブルース形式の曲はないのだが、とにかく古い音楽が全部いいとはいわないが、ときどきとてつもない宝物が隠れているので、ヒップホップ聴いてるひともドラムンベース聴いてるひともサルサやアフリカンポップやブラジルとか聴いてるひとも、たまにはこういうのを聴くのは良い刺激になると思います。このえぐさは神もびっくりするはず。ああ、極上の音楽はいろいろなところにあって、しかも剥き出しになっているのだなあ。本作はヘビィローテイション棚に入れること決定。