lynn johnston

「THE BIRTH OF THE CRUEL」(SST RECORDS SST127)
CRUEL FREDERICK

これ……いまだになんなのかよくわからんのであります。出た当時(20年も前ですよ!)、某専門店の店頭で試聴して、おおっ、これはおもろい、と思って購入し、いまだに持っているのだが、「ムーン・リヴァー」とか「アメイジング・グレイス」といったポップチューンや、「ロンリー・ウーマン」「ゴースト」「ベルズ」といったフリージャズスタンダードをカルテット(2サックス、ベース、ドラム)で演奏するというコンセプトが、あの当時はすごく新しく思えたのである。あのころもそう思ったのだが、今聴いてみても、「アイラー」なのだ。オーネットの曲をやったり、いろいろやっているが、全体的にはアイラー的な演奏である。そして、今ではアイラーの再評価とかアイラーに影響された演奏は少なからずあるが、あの当時はほんとに少なくて、そのあたりも「鬼子」のように私を感心させたのである。このグループのメンバーがどういう経歴で今どういう音楽をやっているのかはしらないが、あの当時、アイラー的な演奏を行っていたという先駆的な事実だけは心に刻みたい。おそらくテナーのひとがリーダーなのだろうとは思うが(もう一枚このグループでのアルバムが出ていて、テナーのリン・ジョンストンとベースのガイ・ベネット以外はメンバーチェンジしているらしい)、なかなか豪腕で、骨太なブロウをきかせてくれる。ヴァンダーマークやマーズ・ウィリアムズに先駆けたような演奏(?)ともいえるし、フリージャズの一種のパロディともいえる。テナーのリン・ジョンストンは今も現役ぱりぱりらしいですね。だれのリーダー作なのかもよくわからないが、一応リン・ジョンストンの項に入れておく。