「PALM OF SOUL」(AUM FIDELITY AUM0389)
KIDD JORDAN HAMID DRAKE WILLIAM PARKER
キッド・ジョーダンというと、フレッド・アンダーソンとの共演や、マーシャル・アレンと演っているアルバムなどが頭に浮かぶので、シカゴを中心に活動しているのかと勝手に思っていたら、ぜんぜちがっていて、ニューオリンズのひとで、レイ・チャールズやアール・キングらとも働いたようなR&B系のセッションサックス奏者だったらしい。いやー、信じられませんねー。このひとは今、70代半ばのようだが、ぐちゃぐちゃのフリージャズしか演らないもんだと思ってました。このひとやフレッド・アンダーソンを聴く喜びのひとつは、70になってもこんな風にぐじゃぐじゃにブロウしていていいんだ、という確信が持てることである。ジジイのフリージャズをなめたらあかんで! そんな勇壮な気持ちになれるのである。で、本作だが、なにしろ共演がウィリアム・パーカーとハミッド・ドレイクというのだから聴かずにはおれない。ライナーを読んでいると、例のカトリーナの直撃でキッド・ジョーダンは住居を失い、ブルックリンに逃げて、このふたりとセッションを持ったらしい。70過ぎでえらい目にあったものだが、このアルバムの演奏はそんな悲壮感はまるでなく、すばらしいリズムセクションを得て、いきいきと吹きまくるキッドの若々しい姿がある。ライナーノートにジョーダンの曰く、「このセッションのとき、わしはハリケーンについて考えておらんかった。わしにとってのハリケーンは、ウィリアムとハミッドじゃった」……さすがですなあキッド・ジョーダン。