taiichi kamimura

「CHOROS & IMPROVISATIONS LIVE」(TRAVESSIA TRV−019)
TAIICHI KAMIMURA/TETSU SAITOH

 ピシンギーニャとベネジート・ラセルダの曲を中心にブラジル音楽が7曲、即興が1曲、かみむら奏一の曲が1曲という構成になっていて、つまりは本格的なブラジル音楽のアルバムなのだが、本当にすばらしかった。買ってから何度聴いたことだろう。ものすごく繊細なのに躍動感にあふれ、技術的にも完璧であり、この先もずっと聞き続けたいアルバムだった。ピシンギーニャとラセルダの曲を母体としているのに、ちゃんとこのふたりの音楽になっており、しかもちゃんとピシンギーニャとラセルダの音楽にもなっている、という離れ業である。ベースとサックスのからみが、互いに互いをプッシュしていて最高。4曲目と7曲目に2曲だけ入っているフリーインプロヴィゼイションもめちゃよかった(2曲だけだが、ほかの曲に比べて演奏時間は長いので堪能できます)。「めくるめく」という感じの即興の大渦に巻き込まれる。故齋藤徹のベースの深みのある音色と迫力あるリズムのすばらしさ、ときに一音で圧倒する破壊力などは文章では表現するのがむずかしい。かみむら泰一の、音色からダイナミクスからアーティキュレイションまですみずみにまで気を配った、しかもスピード感あふれるサックスの表現力もめちゃくちゃすばらしい(ポルタメントみたいな奏法もすごい)。後世に残る傑作と言ってもいいのではないか。少なくとも私はそう思います。この世にこんな音楽があることに感謝であります。最初から最後までどこを切っても宝物のようなアルバム。