yoshiyuki kawaguchi

「渋栗〜渋さ PLAYS 栗コーダー〜」(サボテン兄弟商会 DDCZ−1608)
川口義之 with 栗コーダーカルテット & 渋さ知らズオーケストラ

 すばらしい。1曲目からラストまで全部名曲名演で、「あっ」というまに聴きとおしてしまう。栗コーダーの軽妙さと渋さ知らズの重さが絶妙にブレンドされ、ひとつのトータルアルバムとして完成されている。こんなことを考えて実行してしまう川口義之というひとはすごい。栗コーダーの曲を渋さがやり、渋さの曲を栗コーダーがやるという趣向だが、結局は区別がなくなってしまい、うわー、楽しかった……としか言いようがない。1曲目の「ピタゴラスイッチ」のテーマは何度聴いても名曲だ。2曲はめちゃくちゃ速いマーチみたいな曲。3曲目はおなじみ「本多工務店のテーマ」をしんみり、ほっこりと。こういうアレンジで聴くと、コンドルが飛んでいくみたいにも聞こえるな。4曲目はデキシーっぽいというかゴスペルっぽい曲だが、途中のソロはブルースになる。片山広明のテナーが炸裂し、クラリネットソロは大熊さんか? 5曲目は名曲中の名曲「ナーダム」をしみじみ。林さんがやるとエスニックでパワーに満ちたメロディに聞こえるが、こういうやりかたで演奏するとまるでわらべ歌のようにも聞こえる。ええ曲やなー。6曲目はコンポステラでもおなじみの「月下の一群」。これもめちゃくちゃええ曲。酔っ払って聴くと泣ける。いや、酔ってなくても泣く。7曲目はよく知らないが歌がついててもおかしくないええ曲。立花秀輝のすばらしくもみずみずしいアルトソロが炸裂する。8曲目はこれもおなじみの「皇帝」を栗コーダーがまるで教会音楽のように。9曲目は低音のパターンがずーっと続く、なんともいえない雰囲気のバラード(?)。ヴァイオリンとピアノソロの醸し出す硬質な叙情がすばらしい。10曲目はこれもおなじみの「ひこーき」を栗コーダーがインストで。私の理解では、この曲は石川啄木の詩に不破さんが曲をつけたものだと思っていたが、こうして聴くと曲だけでもめちゃくちゃいいことがわかる。11曲目はこれもおなじみの「火男」だが、こういうアレンジでするとピタゴラスイッチのようにかわいい。12曲目は6曲目の「月下の一群」を今度は渋さ知らズの演奏で。低音中心にゴリゴリいうソロは吉田隆一。13曲目はラテンっぽいリズムの曲で、咆哮するまさに私好みのテナーソロは佐藤帆。かっこいい! つづくギターソロは社長。これもかっこいいねー。ラストの14曲目は「犬姫」というタイトルで、なぜかおしゃれなシャンソンみたいな雰囲気。締めにふさわしい。いやー、ええアルバムですね! 大傑作です。